2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a hybrid type paper-based devices for multi-target simultaneous concentration measurement of components in blood
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18J20882
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小松 雄士 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | デジタルマイクロフルイディクス / 紙デバイス / 血液 / リチウムイオン / 比色分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究担当者がこれまでに開発した血中Li+濃度測定のための紙デバイス作製を参考にして、紙デバイスと血漿分離と定容導入が可能なマイクロユニット(DMF)を組み合わせた血中Li+濃度測定のためのハイブリッド型紙デバイスの開発を目的とした。初めに、Li+検出用紙デバイスの作製方法を検討した。これまでの研究により、ろ紙に市販のLi+検出試薬を濃縮乾固することにより、紙部材のみ血中Li+濃度測定を達成している。この研究での作製条件を参考に、作製方法を検討した結果、長方形(1×4 cm)に裁断したろ紙にLi+検出試薬(350 μL)を濃縮乾固した後、パンチ(直径2 mm)でくり抜くことで、紙デバイスの作製に成功した。続いて、作製した紙デバイスを組み込んだハイブリッド型紙デバイスでLi+標準試料を測定した。測定は、発色の程度を画像解析(Image J)によりマゼンタ強度として算出した。マゼンタ強度は、双極性障害の治療薬物モニタリングの測定範囲である0~2 mMのLi+濃度間で、良い直線性が得られた。また、検出限界は0.267mMであり、治療濃度範囲(0.4~1.2 mM)を下回っているため、臨床応用には問題ないと考えている。最後に、ヒト血液にLi+をスパイクした血液試料を用いて、ハイブリッド型紙デバイスによる血中Li+濃度測定を行った。測定性能を比較するために、同じ血液試料から遠心分離で得た血漿試料を用いた測定も行った。血液試料および血漿試料の測定結果は、非常によく一致し、標準偏差も同程度であった。つまり、DMFにより分離される血漿は、遠心分離で得られる血漿と遜色がなく、ごく微量含まれる赤血球が測定性能に影響しないことを示している。したがって、本研究により血中Li+濃度測定可能なハイブリッド型紙デバイスの開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って研究を推進し、血中Li+濃度測定可能なハイブリット型紙デバイスの開発を行った。昨年度までに、紙デバイスと血漿分離と定容導入が可能なDMFを組み合わせたハイブリッドデバイスで、Li標準試料の半定量分析に成功している。そこで、本年度は高感度なLi+検出用の紙デバイスを作製し、DMFと組み合わせたハイブリッドデバイスで標準試料を測定した。その結果、従来法であるマイクロプレートリーダーの結果に比べて感度が劣るものの、再現性良く治療濃度範囲(0.4~1.2 mM)以下の検出限界(0.27 mM)を達成した。続いて、ヒト血液にLi+をスパイクした血液試料を調製し、ハイブリッド型紙デバイスで血中Li+濃度測定を行った。測定性能を比較するために、同じ血液試料から遠心分離により得た血漿をハイブリッド型紙デバイスおよび従来法で測定した。ハイブリッドデバイスによる血液および血漿試料の測定結果は、非常によく一致した。これは、DMFで分離された血漿に若干含まれる赤血球が測定性能に影響しないことを示している。同時に、測定性能が紙デバイスに依存していることも明らかとなった。また、ハイブリッド型紙デバイスと従来法の結果もほぼ一致したが、標準試料の場合と同様に測定感度は従来法よりも劣る結果となった。しかしながら、本研究で開発したハイブリット型紙デバイスは、検出に要する時間は最大4分と迅速性に優れる。さらに、必要な血液量は微量(5μL)であり、検出試薬の低減(低コスト化)も達成した。したがって、研究計画3)に該当する血中Li+濃度測定(血中Li+定量分析)が可能なハイブリット型紙デバイス開発に成功した。以上より、本研究が期待以上に進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
開発したハイブリッド型デバイスは、紙デバイスがDMFに組み込まれているため、汎用性という点で欠点がある。そこで今後の研究では、実用化に向けて紙センサーをカートリッジ化し、これを外部から脱着可能なデバイスの開発を行う。初めに、DMFの基板を電極材料が塗布されたPETフィルムに変更し、これまでの研究で最適化した血球分離条件(1.5 MHz, 51.2 Vrms, 200 μm空間)を用いて分離性能を検討する。分離ができない場合は、周波数、印加電圧、空間サイズを変更して、ITO-PETフィルムに適した分離条件を探索する。また、DMFの下板フィルムには、パンチで血漿用試料導入口を作製する。続いて、脱着用固定ホルダーの作製を作製し、標準試料による測定を行う。DMFの空隙はシリコーンオイルで満たされており、紙カートリッジの検出部とDMFの試料導入口が正確に位置合わせされ、かつ高い密着性を確保する必要がある。そこで、バネの押力を利用した固定ホルダーを開発する。最後に、標準試料の測定を行い、従来法の結果と比較する。この際、画像の取得条件(照明、距離、撮影感度など)やオイル浸漬による測定性能への影響についても検討を行う。最後に、研医療機関から入手した血液検体を用いて血中Li+濃度を測定し、従来法と比較する。さらに、血中の様々な疾病マーカーの測定に応用するために、それらに対応した紙カートリッジの開発を行う。紙カートリッジの検出部に固定化する検出試薬量(酵素や基質も含む)や反応時間、温度を検討して、最適な作製および反応条件を明らかにする。可能であれば、開発した複数検出可能な紙カートリッジで血中の様々な疾病マーカーの同時測定とその性能評価を行うことで、開発した脱着式デバイスの汎用性を実証する。
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Research Products
(8 results)