2019 Fiscal Year Annual Research Report
カラスにおける社会行動の性差とその生理基盤の発達および生態との関係の検証
Project/Area Number |
18J20916
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 奈々 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 社会行動 / ストレス / 性差 / ハシブトガラス / ホルモン / 生理指標 / 心拍 / つがい形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果について、期待以上の研究の進展があった。本年度の研究計画であった優劣関係の形成場面におけるストレス反応の性差とその生理基盤の解明にあたり、①心拍による自律神経活動の評価および一連の行動実験が完了した。加えて、②行動薬理操作(メチラポン投与によるコルチコステロン系の抑制)の予備実験が完了した。③昨年度実施したつがいに対するバソトシン投与実験の予備データは、追加の解析を行い、査読付き国際学会(Behavior 2019, シカゴ大学)にて発表した。本年度の研究成果(①)は、日本動物行動学会第38回大会、第43回鳥類内分泌研究会にて発表し、フィードバックを受けた。この研究成果は現在論文投稿準備作業中である。本年度の研究成果(②)により、本研究課題の実験対象種であるカラスにおいてコルチコステロンを抑制する薬剤およびその投薬濃度の設定が確認できた。本実験の進捗成果により、来年度に本実験を実施予定である優劣関係の形成場面におけるストレス反応の性差検証にあたり必要となる生理計測系の立ち上げが全て完了した。本年度の研究成果(③)は新たに得られたつがいの被検体サンプルに対し追加実験を行い、結果の頑健性を確認した上で論文投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果について、期待以上の研究の進展があった。本年度の研究計画であった優劣関係の形成場面におけるストレス反応の性差とその生理基盤の解明にあたり、①心拍による自律神経活動の評価および一連の行動実験が完了した。加えて、②行動薬理操作(メチラポン投与によるコルチコステロン系の抑制)の予備実験が完了した。③昨年度実施したつがいに対するバソトシン投与実験の予備データは、追加の解析を行い、査読付き国際学会(Behavior 2019, シカゴ大学)にて発表した。本年度の研究成果(①)は、日本動物行動学会第38回大会、第43回鳥類内分泌研究会にて発表し、フィードバックを受けた。この研究成果は現在論文投稿準備作業中である。本年度の研究成果(②)により、本研究課題の実験対象種であるカラスにおいてコルチコステロンを抑制する薬剤およびその投薬濃度の設定が確認できた。本実験の進捗成果により、来年度に本実験を実施予定である優劣関係の形成場面におけるストレス反応の性差検証にあたり必要となる生理計測系の立ち上げが全て完了した。本年度の研究の進捗により、研究計画時に想定していた内分泌系の生理計測系に加えて、社会交渉場面における自由行動下での自律神経活動の評価が可能となった。内分泌系・自律神経系の生理活性を同一被検体種において確立したことで、より包括的なストレス反応の生理基盤の理解が進むことが期待できる。本年度の研究成果(③)は新たに得られたつがいの被検体サンプルに対し追加実験を行い、結果の頑健性を確認した上で論文投稿予定である。上記の進捗状況により、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の2つの研究テーマを軸として推進する予定である。第一に、昨年度に引き続き、成熟後のつがい個体間における親和行動の性差と生理基盤を調べる。バソプレッシ(VT)は、一夫一妻のげっ歯類において、オス-メス間では親和行動、オス-オス間では攻 撃行動を調整するホルモンである。鳥類のつがいにおけるVTの機能は未解明であり、本研究では、カラスのつがい個体にVTを投与し、社会行動への関与を調べる。オスへのVT投与 は、つがいメスへの親和行動を促進し、ライバルオスへの攻撃を亢進することが予想され る。メスへのVT 投与は、親和・攻撃行動ともに影響しないと予想する。第二に、優劣関係形成場面での社会的記憶の形成の性差およびその生理基盤を検証する。本研究テーマでは、昨年度に立ち上げを行ったホルモンの行動薬理系および心拍計測系を用いる。
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