2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18J20921
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
及川 隼平 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子 / 局在表面プラズモン / 表面格子共鳴 / 強結合 / フォトニック結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では緻密に構造設計されたプラズモン活性が高い金属ナノ粒子の二次元配列構造を用いて光を高効率に捕集し、低損失で光エネルギーを伝搬・集約させる系を構築することを試みる。さらには、電気化学手法等を駆使することで、光の散乱問題を解決し、集約光エネルギーを利用した新奇光学物性の発現を目指す。 2019年度は高効率光エネルギー集約システム構築の基盤となる、六方格子型Auフォトニック結晶の構築を試みた。フォトニック結晶の光学性能は格子間隔、粒子形状、表面状態に強く依存することが知られている。電子線描画法を用いて粒子形状の制御を行い、さらには電気化学的手法を用いて表面状態を最適化することによって、単粒子プラズモンに誘起されるLSPと比較して数十倍高いエネルギー効率を有する二次元材料の構築を達成した。さらに光エネルギーを特定サイトへ集約するべく、この構造内に空欠陥を導入した。構造パラメータを最適化することによって、欠陥準位を光のバンド端へ形成することができ、欠陥準位に光エネルギーが束縛される現象を確認することができた。この構造では単一粒子と比較して系内に光を長時間閉じ込めることが可能となり、色素励起子などの光アクティブな物質との強い相互作用が期待される。実際に最適化したフォトニック結晶に、エネルギーの近接した色素分子を担持したところ、強固な電磁場相互作用によってプラズモンと色素励起子間に新たな光学準位の形成が確認された。この光物質相は強結合と呼ばれており、光吸収波長の広帯域化や光励起寿命の長寿命化といった光学特性を示すことから、光エネルギーの高効率利用に向けて応用が大いに期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究員は、プラズモンによる散乱光を抑制し、ナノ空間へ高度に光を閉じ込める構造の作製に向けて、電子線描画法と電気化学手法による緻密な構造設計を通じて、単粒子と比して数十倍のエネルギー閉じ込め効率を有する六方格子型金ナノディスク基板の作製に成功し、本年度の研究課題である高効率光捕集系の構築を達成した。さらに、当該研究員は金属格子内に光の準位に接合した空欠陥を導入することで、欠陥内に光を閉じ込めることができるという新たな現象を見出した。加えて系内に閉じ込めた光エネルギーを効率よく遠方へと伝搬させる系の構築に向けて、シアニン色素など種々の励起子エネルギーを発現する分子を数多く検討した。その結果、金ナノ構造と色素励起子との間に強結合と呼ばれる新たな光学状態を形成させることに成功した。この新規光物質相の形成は、本年度計画の見込みを上回る期待以上の成果である。この強結合状態は、光吸収波長の広帯域化や光励起寿命の長寿命化といった光学特性を示すことから、光エネルギーの高効率利用に向けて応用が大いに期待される。以上の研究業績は、当該研究員の独創的な創意工夫と、そしてなによりも数えきれないほどの試行錯誤の結果であることは明白であり、その点も踏まえても期待以上の研究の進展であったと言える。研究員は、明確な目的意識に沿って分光物理化学や材料調製法といったあらゆる分野において自己研鑽を積んでおり、その状況を鑑みても本年度における更なる研究の進展が強く期待されると予感している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度では研究遂行の主軸となるAu格子構造体と多種色素との強結合状態の形成を達成した。また、欠陥を導入することで、光が欠陥準位に集約することが示唆される結果を得た。そこで本年度の研究では、目的を達成するために以下の研究を行う。 角度分解スペクトル装置を構築し、空欠陥導入型Au格子構造-色素強結合系に対して角度分解蛍光測定や消光測定を行うことで光の状態図の調査、光の集約効果について解明する。光集約効果の最適構造が得らえた後、空欠陥に金二量体構造を導入し三準位強結合状態の形成を試みる。その際に、電気化学手法を用いて原子レベルでの構造体制御を行うことで、形成した強結合下肢準位がAu二量体構造のエネルギーに近接する条件を明確にする。さらに 、系に対して電気化学電荷注入発光測定を行うことで、電荷注入密度と発光強度の相関からエネルギー伝搬の平均自由行程を明らかとする。以上の評価を通じて、これまでに報告例がない強結合準位と真空準位との相関が初めて明らかとする。得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。
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