2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J20935
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森川 億人 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 格子場理論 / 場の量子論 / 超対称性 / リサージェンス理論 / リノーマロン / 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、場の量子論と超弦理論における種々の現象を非摂動論的なアプローチにより解析し、非摂動論的定式化への理解を推し進めることを目指す。当該年度の研究は以下の研究を行った。 (1) ランダウ・ギンツブルグ模型の数値的研究。前年度まで様々なポテンシャルを持つ超対称ランダウ・ギンツブルグ模型に対して非摂動論的手法の確立とその検証を行ってきた。本研究では連続極限に関して考察し、特に最も簡単なポテンシャルの場合に有限サイズスケーリング法に基づきスケーリング次元の精密測定を行った。この成果は論文1篇にまとめられ、学術誌に出版されている。これまでの超共形場理論の数値的研究に関して国際会議プロシーディング1篇を発表した。 (2) S^1コンパクト化のリノーマロンへの影響。場の量子論において摂動級数展開が発散級数となるためにその予言に不定性を生じるが、リサージェンス理論ではこれは非摂動論的効果によって解消されると信じられている。近年リノーマロン不定性がバイオンに対応すると提案された。バイオンはS^1コンパクト化された理論に存在する半古典的物体であり、一方リノーマロンに対するコンパクト化の影響はあまり知られていなかった。本研究では、CP^N模型とアジョイントフェルミオンを含むSU(N)ゲージ理論でラージN近似を用いたリノーマロンの解析を行い、リノーマロンとバイオンが異なる特性を持つことを示唆した。この成果は論文4篇にまとめられ、うち3篇は学術誌に出版されている。 (3) バイオンに対応する摂動論的不定性の同定。(2)の研究成果から、バイオンに対してリノーマロン以外の別のリサージェンス構造があるはずである。本研究では、従来から知られているファインマンダイアグラムの数の爆発がコンパクト化によって影響を受けることを示し、これがバイオンに対応するという結果を得た。この成果を論文1篇で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のように、ランダウ・ギンツブルグ模型の数値シミュレーションについて、計画されていた連続極限の考察・解析を行い研究論文1篇を発表することができた。また、近年注目を集めているリノーマロンとバイオンに関するリサージェンス構造の予想に対して、反証となる研究成果を得ることができた。これに加え、バイオンによって相殺される摂動論的不定性を同定することができ、これらに関して研究論文5篇を発表した。リサージェンス構造にある摂動論的不定性は非摂動論的効果を符号化しているものであり、摂動論の理論的整合性に対する理解は非摂動論的なアプローチの実現として重要な成果である。よって当該研究課題に関して精力的な研究を行うことができ、かつ当初の研究計画以上に進展があったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、より複雑かつ一般的なランダウ・ギンツブルグ模型の数値的研究を行う。まず簡単な模型として標的空間が低次元複素多様体となる場合について解析する。また、カラビ・ヤウ空間のモジュライの変形など、超弦理論の時空構造を解明するための手法を開発する。 リサージェンス理論に関連する研究については、コンパクト化された理論におけるリノーマロンに対応する非摂動論的効果の探索・検証が必要となる。特にラージN近似を用いない一般のNの場合について解析を行う。また、コンパクト化の有無で異なる振る舞いをするリノーマロンの統一的な理解を目指す。 平成30年度でのグラディエント・フロー研究、当該年度のリノーマロン・バイオン研究と同様に、さらに新しい研究を模索・推進したい。
|