2019 Fiscal Year Annual Research Report
The research about the mechanism of lunar-synchronized spawning in tropical grouper fish
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18J20958
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
福永 耕大 琉球大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ハタ科魚類 / 月周性 / 概日時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物時計は自律振動を刻む生理機構であり、環境に応じた適切な生命活動を補助する役割を担う。熱帯・亜熱帯域に生息する多くの魚類やサンゴなどの海洋生物は、約1か月周期の産卵リズムを示すことが知られている。月周性産卵と呼ばれるこの産卵現象は、特定の月齢付近でくり返されることが分かっている。これまでの研究から、生物が月齢を認識するには夜間の月光が重要であると考えられているが、生物がどのように月の満ち欠けを感じ、予測するのかについては未だに不明な点が多く残っており、月周性産卵が起こる仕組みは分かっていない。本研究では月周性産卵の仕組みを明らかにするための基礎的な知見を得ることを目的として、月周性産卵の入力系に関与すると考えられる概日時計遺伝子Cryptochrome(Cry)と、出力系に関与すると考えられる血中ホルモンのメラトニンに着目して以下に示す実験を行った。 ①月光照射実験(2019年5月~7月) 夜間の月光照射が脳内のCry遺伝子の発現量に与える影響を検証するため、屋内水槽での飼育実験を実施した。自然界から採集したカンモンハタを瀬底研究施設の屋内水槽へと収容し、人工月光を照射した条件下で飼育した。人工月光照射後から1週間おきに個体から脳を採取しCry遺伝子の発現量を定量PCR法によって測定した。その結果、約2週間の月光照射は視床下部におけるcry遺伝子の発現を増加させた。脳下垂体においてはcry1とcry2はそれぞれ約2週間と約4週間の月光照射によって発現が増加することが明らかとなった。
②脳下垂体細胞培養実験(2019年5月~9月) 生殖腺刺激ホルモン産生細胞へのメラトニンの直接的な作用を調べるため、脳下垂体細胞の培養実験を行う。そのためにカンモンハタ脳下垂体からの細胞収集方法の確立へと着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①月光照射実験においては夜間の月光照射がカンモンハタの脳内のCry遺伝子の発現量を変化させることを明らかにした。このことから、月周性産卵の時刻合わせには、夜間の月光が同調因子として関与する可能性が改めて示された。これらの成果をまとめた英語論文の執筆を終え、査読中であるため。
②脳下垂体細胞の収集についてはトリプシンを用いた常法に従った。しかしながら、得られた細胞の生存率が低く、十分な細胞数が確保できなかった理由などから、メラトニンを投与しての発現解析には至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた成果を精査し、月周性産卵における脳内のCry遺伝子の機能について詳細な検証を行う。さらに、月光照射実験においては、人工月光が産卵行動に対して影響を及ぼすことが示唆されており、これらの成果をまとめた英語論文を執筆して報告していく。また、本年度においては、脳下垂体細胞の培養実験には至らなかったため、次年度でも継続して実験を行う予定である。
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