2019 Fiscal Year Annual Research Report
モバイルマネー導入地域における出稼ぎ労働者の厚生及び送金の意思決定メカニズム
Project/Area Number |
18J20988
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
江上 弘幸 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | モバイルマネー / マッチングファンド / 出稼ぎ労働者 / 送金 / 教育投資 / 発展途上国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)モバイルマネーを活用したフィールド実験を通して出稼ぎ労働者の厚生及び送金メカニズムを分析する研究と、(2)モバイルマネーの導入が妊婦健診の受診行動に及ぼす影響について既存の家計調査データを分析した研究の二本立てである。 (1)については、モバイルマネーが普及し出稼ぎ労働者も多いバングラデシュを舞台にマッチングファンド実験を実施中である。マッチングファンド実験とは、被験者の拠出した金額に応じた額の金銭支援を被験者に対して行うものである。単なるキャッシュトランスファーとは異なるアプローチで、より効果的な支援を行えるのではないかと研究者のみならず実務家からも注目を集めている。2019年度は実験及びサーベイの最中であり論文や学会発表には至らなかったが、2020年度で成果の取りまとめを行う予定である。 (2)の研究については、”Impact of Mobile Money Adoption on Maternal Health Seeking Behavior: Evidence from Rural Uganda “(ウガンダ農村におけるモバイルマネーの普及と周産期医療へのアクセス)を国際学術誌に投稿した。さらに、2つ目の論文 “Receiving maternal care in extreme weather: evidence of mobile money use in rural Uganda“(洪水・干ばつの状況下での妊産婦検診:ウガンダ農村におけるモバイルマネー普及の影響)の学会発表を2020年3月にCSAE CONFERENCE 2020 (オクスフォード大・新型コロナウィルスの感染拡大に伴いWEB発表に切替え)で行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)については、2019年度は被験者から教育資金の拠出を受け付けるとともに、労働者の実家に対する定期的な送金を開始した(本マッチングファンドでは 拠出金を2倍にして毎月分割送金する)。並行して、出稼ぎ労働者と地元家族の両サイド(それぞれ約700家計、合計約1400家計に対し、2~3か月ごとに携帯電話でサーベイを実施し、送金や消費などのデータの収集をこまめに行い、マッチングファンドによる人為的な所得移転(外生的な正の所得ショック)に対する仕送りの送り手・受け手の両サイドの反応 を 記録し続けた。(2)については、国際学会で発表したほか、国際学術誌に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)については2020年度に最後のサーベイを実施し、データの分析・成果の取りまとめを行う予定である。ただし、今後のサーベイが順調にすすむかどうかはコロナウィルスの感染拡大の影響 のため不透明である。本研究は対面ではなく携帯電話インタビューであるため比較的悪影響を受けにくいものの、既に一部の調査員がコロナウィルス流行を理由に仕事を放棄してしまったという報告を受けている。(2)については、国際学術誌への掲載を目指して分析・発表を継続する。
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