2018 Fiscal Year Annual Research Report
動学的アプローチによる現代日本女性のライフコースの特徴とそのメカニズム
Project/Area Number |
18J21033
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 岳大 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ライフコース / キャリア / 性別職域分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、特に専門分野に直接関わるライフコース論に関する文献の整理や通読、さらには少し専門領域にも関連する教育社会学、社会階層論に関する文献の整理を進めた上で、学会方向と論文投稿を実施した。 具体的には、7月に行われたISAでの資料収集を行い、8月開催の数理社会学会において労働市場での地位達成に関する高校学科の影響に関する報告、さらには12月末日に同報告結果をまとめた東北社会学会への論文投稿(査読あり)、加えて3月開催の数理社会学会における女性の離職理由のパターン分析に関する研究報告を行った。また、現在執筆途中の原稿として女性の労働時間の調整メカニズムに関する社会学的考察、性別職域分離に関する考察に関する研究報告など、専門領域に関する研究に関しても研究を進めた。特に、性別職域分離に関する研究としては、2019年7月にオランダで開催されるICASへアブストラクトを提出し、無事アクセプトされたため、研究報告を行う予定である。 また、研究会としては、東京大学社会科学研究所の社研パネルプロジェクトメンバーとして研究成果の方向を行った(本格的な稼働はH31年度)。 その他、大学内の授業も多く参加し、博士課程認定単位も計画通りに取得することができた。 以上の活動で、特に自分の研究につながる実績として、特に女性の離職理由に関する研究成果である。具体的には女性の離職理由を類型化し、各類型ごとに離職後の満足度が異なるか否かを分析した。その結果、離職によって無職となった女性の離職による満足度は低く彼女らは客観的地位も主観的地位も低い階層であることが示唆された。今後は特に性別職域分離に着目し、いわゆる女性職・男性職からの離職・再就職などのメカニズムをより詳細に解明することを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当年度は主に学会報告,査読論文執筆,先行研究の探索を進め,博士論文に向けた下地を作ることに尽力した.学会報告に関しては,夏と冬に開催された数理社会学会にて報告を行い,女性の離職理由に関する類型化を社会調査データを用いた実証分析によって試みた.ポスター報告であったが,数理統計学に優れた多くの先生から有意義な助言をいただくことができた.また,査読論文については,キャリアにおける無業リスクに関する実証分析の論文を12月末に東北社会学会への投稿し,掲載が決定した.また,女性の労働時間の調整メカニズムに関する論文と性別職域分離構造の趨勢に関する論文の執筆を進めており,2019年度の夏を目途に投稿を目指している. また,東京大学社会科学研究所により実施されている,東大社研パネル研究会に所属し,社会調査の実査に関わり,また研究報告を行い,一定程度の貢献ができた.2019年も引き続き所属し,新サンプルを加えた大規模な実査が行われることが予定されている. 自己評価としてはおおむね順調であるとしたが,欲を言えば当年度中に査読論文をもう一つ投稿できればよかったと考えている.ただし,投稿していない論文についても完成度は80%程度であるため,その点は及第点であると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の特に大きな課題としては,夏に控える国際学会での報告と社会調査の実査である. 国際学会についてはライデンで行われるICASという学会への参加が決定しており,ここで日本の性別職域分離構造に関する趨勢についての報告を行う.ここで行う報告は女性のライフコースを捉えるための基本的な枠組みである,ジェンダーで分離された労働市場の構造を把握する試みであり,研究全体からみても重要な研究報告となる. もう一つの社会調査の実際に関しては,調査会社の女性モニターを用いてキャリア移動に関する調査を行う予定である.具体的には最終学歴を終えてから現在に至るまでの職歴をすべて尋ね,その上で結婚や出産などのライフイベントとその時期を同時に聞き,職歴とライフイベントとの結びつきを捉えるための調査を実施する.調査会社についてもすでに数社で見積もりを行っており,夏から秋頃に実査を行うことを予定している. また,2018年度に執筆を進めてきた論文を夏頃に投稿を行う.投稿先としては,社会調査協会の社会と調査,また家族社会学会の家族社会学研究を考えている.
|