2019 Fiscal Year Annual Research Report
免疫細胞レクチンSiglec-7の新奇シアル酸結合様式とその免疫制御機構の解明
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18J21038
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 淳 名古屋大学, 生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Siglec-7 / 糖鎖免疫 / 糖鎖認識 / シアル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
Siglec-7はヒトNK細胞や単球など主に免疫細胞に発現するSiglecの1つであり、細胞表面や分泌タンパク質に修飾する糖鎖の構成分子であるシアル酸と結合し免疫を制御している。Siglec-7の認識するシアル酸含有糖鎖構造は複数種類存在することが知られており、その複雑な結合特異性の分子機構と機能的意義は未解明である。本研究では、Siglec-7の複雑なシアル酸認識機構とその免疫制御機構の解明を目指し研究を進めた。今年度の研究成果として、第一に、Siglec-7のリガンドの同定に成功した。組換え体Siglec-7を用いたアフィニティー精製によって、がん細胞の膜画分からリガンド候補糖タンパク質を調製し、その分子を質量分析法および免疫化学的手法によって同定することができた。また、実際にがん細胞表面においてSiglec-7と結合していることは、ビオチン誘導体を利用した近接ラベリング法によって証明することができた。第二に、このリガンド分子とSiglec-7が相互作用することの意義を探るために、まず、Siglec-7の結合がリガンド分子の発現量に依存的かどうかを調べた。そのためにリガンド分子の発現量が異なる細胞株の樹立を行い、Siglec-7の細胞表面への結合性を調べたところ、その発現量には大きく依存しないことが判明した。次に、このリガンド分子発現量が異なるがん細胞株を用いて、Siglec-7を強制発現させたNK細胞による細胞障害性実験を行った。その結果、リガンド分子の発現量が多い時のみ、Siglec-7発現NK細胞に対する抵抗性を持つことが判明した。がん細胞はリガンド分子を一定量以上発現させることで、Siglec-7を介するNK細胞の細胞障害性抑制を誘導することが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容としては進んでいるが、研究成果として雑誌投稿ができていないため。現在、雑誌投稿を準備している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Siglec-7の構造-結合相関研究:同定されたSiglec-7のリガンド分子と変異体Siglec-7の結合性を評価する。その知見をもとに、新奇の結合サイトと既知の結合サイトそれぞれに特異的な高親和性のリガンドを見出す。各変異体とリガンドを用いて、バイオレイヤー干渉法に基づく速度論的解析によって詳細な結合様式の違いを明らかにする。 (2) Siglec-7のリガンド分子の同定: Siglec-7を用いた親和性精製と質量分析法によって、リガンド分子の同定を進める。同定した遺伝子のノックアウトまたはノックダウンした細胞株を作出する。これらの細胞を用いてSiglec-7の結合性を評価する。 (3) リガンド糖鎖の生合成機構の解明:細胞にSiglec-7リガンド糖鎖構造の生合成酵素を遺伝子導入し、リガンド分子を親和性精製し、質量分析により分子と糖鎖構造を同定する。また、TurboIDを用いた近接ラベリング法によってビオチン修飾した基質分子を精製し、分子同定や糖鎖構造の解析に用いる。 (4) Siglec-7-リガンド糖鎖相互作用を介した免疫制御機構の解明:Siglec-7を遺伝子導入したNK細胞を用いて、高親和性合成化合物の効果を細胞傷害性実験により評価する。さらに、リガンド分子を組換え体として調製し、Siglec-7への免疫制御効果のリガンド依存性を解析する。
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