2018 Fiscal Year Annual Research Report
マウス精巣特異的lncRNAクラスターの新規メカニズムと生理機能解析
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18J21075
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大塚 海 北海道大学, 大学院生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | long noncoding RNA / 精子形成 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30 年度に行った研究では、マウスPrss43/Tessp-3・Prss45 間より転写される新規のlncRNA をlncRNA-3、Prss45・Prss46 間より転写される2種類の新規lncRNA をlncRNA-4u、lncRNA-4d と仮名をつけ、解析を行った。はじめに、lncRNA-4u、lncRNA-4d を含むゲノム配列がエンハンサーとしての機能を持つことを明らかにした。この実験において、導入したDNA配列からlncRNA-4uが転写されていたことから、enhancer RNA として機能する可能性が考えられた。 lncRNA-3 が遺伝子の転写制御に関与する可能性について解析を行うため、はじめにマウス精母細胞由来の培養細胞株を用いて、一過的な過剰発現実験を行った。結果として、lncRNA-3 がtrans に転写を制御する機能を持たないことが示唆された。ここで、lncRNA-3 がcis に標的遺伝子の転写を制御する可能性を検証するため、lncRNA-3 を含む合計5.4kb のゲノムDNA配列を得て、レポーター遺伝子の下流に挿入した。ここで、lncRNA-3 の上流にTet-on 発現誘導系に用いられるプロモーターを挿入することで、任意のタイミングでlncRNA-3 の転写を誘導できるような改変プラスミドを作製した。この実験において、誘導時/非誘導時でレポーター遺伝子の活性を定量したところ、lncRNA-3 誘導時において有意に高い活性が確認されたため、lncRNA-3 がcis に転写を活性化することが示唆された。 最後に、in vivo におけるlncRNA-3 の生理的機能を解析するため、lncRNA-3 欠損マウスの作製を行い、6 匹のF0 マウスを得ることに成功した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、マウス精巣特異的なlong noncoding RNAが複数並ぶ遺伝子座(lncRNAクラスター)が減数分裂においてどの様な機能を持つのか解析を行う研究の1年目であった。現在までに、1)lncRNA-3、lncRNA-4u、lncRNA-4dの転写領域や転写方向を明らかとし、2)lncRNA-4uとlncRNA-4dを含むゲノム領域がエンハンサーとして機能することを明らかにした。さらに加えて3)lncRNA-3が少なくともcisに標的遺伝子の転写活性化に寄与することを示したうえで、4)lncRNA-3ノックアウトマウスのF0世代を複数得ることに成功している。これらの成果は、いずれもこのlncRNAクラスターの生理機能解明に近づくものであり、当初提出した申請書の進行状況に大きな遅れは認められない。よって、期待通りに研究が進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実施計画では、主にlncRNA-3の生理機能解析、並びにlncRNA-3、lncRNA-4u及びlncRNA-4dの分子的な作用機序解析を行う予定である。 1)lncRNA-3の生理機能解析は、平成30年度に作製したノックアウトマウスを材料として扱う。ここでは、精子形成に何らかの影響が生じることを仮定し、精巣の組織学的観察と、また雄性生殖細胞のステージ別形態観察、産仔数の計測・比較、また雄性生殖細胞における精子形成関連遺伝子の発現レベルの網羅的解析を行う。ここでは、RNA-seq解析を行うことで、野生型とノックアウト個体で発現変動に有意な差が見られる遺伝子を探索する。この結果についてはqRT-PCRで追試を行う。 2)マウス精母細胞由来の培養細胞株を利用し、lncRNA-3の過剰発現実験・ノックダウン実験を行う。このとき、1)の網羅的解析で発現変動を示した遺伝子について、過剰発現・ノックダウンによる発現変動を定量解析する。 3)平成30年度の実験からlncRNA-4u及びlncRNA-4dを含む領域がエンハンサーとして機能することを明らかにしたため、in vivoでのターゲット領域の同定を試みる。ここでは、マウス雄性生殖細胞で3Cアッセイを行うことで相互作用領域(標的プロモーター)を探索する。加えて、in vitroのエンハンサーアッセイを行うことで、標的プロモーターにエンハンサーとして機能することを確認する。 4)分子メカニズムの解析として、標識オリゴDNAを作製し、ChIRP法によってlncRNA-3のゲノム上結合領域の同定を試みる。ここでは、主に1)のRNA-seq解析によって得られた標的候補遺伝子のクロマチン領域との結合の検証を行う。
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