2018 Fiscal Year Annual Research Report
光電子特性制御と一次構造制御を両立した高性能半導体高分子の創成
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18J21080
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
落合 優登 山形大学, 有機材料システム研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 高分子合成 / 半導体高分子 / ポリチオフェン / 分子量分布 / 精密合成 / ブロック共重合体 / 含フッ素芳香環 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究でははエネルギー準位の調整と重合制御性を両立した高性能半導体高分子の創成を目的とし、汎用的で精密重合可能なポリチオフェン(PT)主鎖に電子欠損性側鎖基を導入した含フッ素芳香環ポリチオフェン 誘導体群を設計した。本年度は、アルキル鎖長の異なる poly(3-(3’-hexyloxy-4’-fluorophenyl)thiophene) (P3HFPhT)、poly(3-(3’-octyloxy-4’-fluorophenyl)thiophene) (P3OFPhT)およびpoly(3-(3’-dodecyloxy-4’- fluorophenyl)thiophene) (P3DFPhT)をそれぞれ熊田触媒移動型重縮合(KCTP)法により合成し、アルキル鎖長および熱処理温度の違いが諸物性と薄膜状態におけるモルフォロジーに与える影響について調査した。UV-vis 測定の結果、熱処理を施さない含フッ素芳香環 PT はアルキル側鎖長に関わらず、全て最大吸収末端を 530~540 nm にもつ単峰性の吸収ピークを示した。P3HFPhT 薄膜は熱処理前後でその吸収特性にほとんど変化がなく、主鎖の平面性が低く有効共役長が短くなっていることが示唆される。また、斜入射広角X線散乱(GIXD)測定 の結果から P3HFPhT 薄膜は複数のラメラ間隔に由来する散乱ピークを示した。おそらく短いアルキル側鎖の自己組織化に起因して、主鎖のコンフォメーションが阻害されている部分が存在すると推定される。一方で P3OFPhT およびP3DFPhT 薄膜は、どちらも100 °Cの熱処理によって 吸収ピークが大きくレッドシフトしており、主鎖 の平面性、分子間のパッキングが向上したことが示唆される。このように、アルキル側鎖長の違いが薄膜状態のモルフォロジーに大きく影響を与えることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は含フッ素芳香環を有するポリチオフェン誘導体類に関して研究を行い、一次構造を制御した種々の半導体高分子の精密合成に成功した。自身で合成を行った試料薄膜の結晶性および配向性の調査を行うために、大型放射光施設SPring-8産業利用分野に大学院生提案型課題として申請を行い、採択(課題番号:2018A1794)。そこで得られたデータを解析し、薄膜モルフォロジーについて新たな知見を得ている。また、有機薄膜太陽電池の光電変換層における効率的なモルフォロジー制御を狙い、P3HT (A)、P3DFPhT (B)、および電子アクセプター性半導体高分子であるナフタレンジイミド共重合体(PNDIT2 = C)とし、これらのセグメントから構成される、全共役ドナー・アクセプター型ブロック共重合体(AC、BC)、およびドナー・ドナー・アクセプター型ブロック共重合体(ABC、BAC)を設計、その合成にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実デバイスの作成およびそこから得られた知見をもとに、より高い素子特性を発揮する分子構造の創出を目指し、分子設計を再考する。現状ではかさ高い側鎖基導入により主鎖のねじれが大きくなってしまい、主鎖平面性の低下が確認されている。そのため主鎖チオフェンの繰り返し単位の間にスペーサーとなる無置換チオフェンの導入や主鎖構造をチエニレンビニレンのような構造を用いることで前述の課題を解決できると考える。また、含フッ素芳香環導入による素子特性への影響のみならず、本研究の特徴である精密重合性を活かし、一次構造と素子特性の相関関係も明らかにする。分子量分布が狭く、分子量の異なるサンプルを準備する。これらのサンプルを用いることで分子量のばらつきに左右されない素子特性の分子量依存性を調査する。さらに、分子量を制御して分布の異なるサンプルを準備することで分子量分布が素子特性に与える影響も調査する。
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Research Products
(4 results)