2019 Fiscal Year Annual Research Report
重力レンズ効果の高解像像復元と高赤方偏移爆発的星形成銀河の星形成機構に関する研究
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18J21092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 剛 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重力レンズ効果 / サブミリ波銀河 / アウトフロー / 空間分解 / 装置開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
自身がALMAで観測した赤方偏移3.042のサブミリ波銀河SDP.81からの[CII] 158 um放射を解析した。前年度では球殻状に膨張する[CII]アウトフローの存在が示唆されたが、今年度はより精細に、[CII]放射の輝度分布から考えられる幾何学的配置を検討した。すると、銀河回転部のnear/far-sideの仮定によっては、インフォール(あるいはmergerによる潮汐力)の可能性も浮上した。mergerにより広がった[CII]放射成分が見えているとすると、SDP.81の爆発的星形成がmergerにより圧縮されたガスによって惹起されたと説明できる。Hatsukade+15で示されている、星成分とガス成分のオフセットについても、潮汐力で説明が可能であり、必ずしも現段階ではアウトフローと結論づけることはできない。以上を踏まえた上で、我々としては[CII]アウトフローを遠方銀河内部で目撃している可能性があるとする論文をAstrophysical Journal誌に投稿し、現在査読者への対応中である。 また、赤方偏移2.56にあるクローバーリーフ・クェーサーのALMAデータの解析も進めている。クローバーリーフは、赤方偏移1.56の前景銀河によって強い重力レンズ効果を受けている。CO(3-2)の積分強度図を用い、共同研究者とともにGLAFICによるモデリングを行なった結果、先行研究の粗いレンズモデル(Venturini+03)が改善でき、SIE+ESで前景銀河の質量分布を記述できることが分かった。 遠方銀河の高解像度観測をするにあたって、候補天体を広くサーベイするのに非常に有用となる新装置DESHIMAプロジェクトにも参画し、データ解析ソフトウェアDe:codeを自身が中心となって開発し、本年度にはファーストライト論文がNature Astronomy誌へと採択・出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自身がALMAで取得したSDP.81の[CII]データの論文化については、当初の想定よりも時間がかかっている。その要因としては、前年度の解析によって示唆された[CII]アウトフローの兆候について、幾何学的配置を再検討した結果、アウトフローではなくインフォールの可能性も浮上したため、両説について考察を深める必要があったことが挙げられる。現在、当該論文はすでに投稿済みであり査読者からのコメントも返ってきているため、近いうちに再投稿する予定である。 一方、本研究課題において高解像度な遠方銀河の観測例を増やすことは重要であり、SDP.81やSDP.9だけでなく、クローバーリーフといった天体についての解析も共同研究者とともに鋭意進行中である。 また、そういった重力レンズ候補天体を探す上でも重要な、新しい観測装置DESHIMAの解析ソフトウェアの開発にも中心となって携わっており、共著論文もNature Astronomy誌へと採択された。 以上に鑑み、全体としては多少の遅れはあるものの、概ね順調に課題は遂行できていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
SDP.81に関する[CII]アウトフローの論文をAstrophysical Journal誌に再投稿し、採択を目指す。 また共同研究者とともに、クローバーリーフ・クエーサーのALMAデータから求められた精細なレンズモデルを用いて、COの周波数方向の3D cubeを像復元し、ソース平面においてsub-kpcスケールでのガスの力学を議論する。それをSDP.81やSDP.9の爆発的星形成と比較し、本研究課題の目的である起源の解明(定常的なガス流入、または銀河衝突による単位面積あたりのガス密度の上昇)を目指す。 さらに高解像度なデータを最大限活用するために、強い重力レンズ効果の像復元手法としてGLEANに代わりスパースモデリングの可能性を検討している。ALMAデータの解析ソフトウェアCASAを用いて、擬似的な観測データを作成し、それにモデル上で強い重力レンズ効果をかませたのち、スパースモデリングを用いた像復元がオリジナルの画像を再現できるかを試す。
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