2018 Fiscal Year Annual Research Report
液状化力学体系の確立:有限変形弾塑性構成則と材料不安定基準に立脚した液状化判定法
Project/Area Number |
18J21097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井口 拓哉 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 材料構成則 / 有限変形理論 / 繰返し塑性 / 下負荷面モデル / Cam-clay / 材料不安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,地盤の液状化現象の発生条件・被害程度を一度に定量評価する手法の提案を目的として,主に以下の2つの研究項目を行う.(1),(2) を組み合わせることで,入力荷重に対していつ液状化が発生するか?液状化被害はどの程度か?を一度に定量評価可能となる. (1) 有限変形においても液状化発生前後の挙動を精緻に表現できる弾塑性構成則の構築 (2) 材料不安定・分岐問題という視点による液状化発生を判定する数理的条件の提案 本研究を遂行する前段階として,昨年度までに繰返し塑性構成則の一種である拡張下負荷面モデルを有限変形へと拡張させるための構成則理論の包括的枠組み構築に取り組んだ.具体的には金属材料の繰返し変形を精緻に表現する材料構成則の構築を行い,提案モデルの性能評価を行った.さらに,提案モデルの問題点を見つけ出し,その要因分析と課題解決の手法を提案した. また本年度はこれまでの成果をもとに,金属材料から地盤材料へと対象を移し,前述の研究項目(1)に取り組んだ.具体的には,下負荷面の概念と応力誘導異方性を表現する回転硬化の概念を導入した,有限変形・異方性回転硬化下負荷面Cam-clayモデルの理論構築に取り組んだ.千田ら(2013;応用力学論文集)における有限変形モデルをベースに,繰返し負荷挙動(サイクリックモビリティ)の表現性能を向上させるために,超弾性構成則や内部変数の発展則の改良を行った.さらに,構成モデルの性能評価においては,ロバストな計算を実現させるために,数値計算プログラムの細かい手直しなどを行った.加えて,提案モデルの実用解析への適用を考慮し,応力更新計算のコスト削減のために塑性発展則の時間積分法に着目し,近似精度を落とした場合における計算精度と計算コストについて検証を行い,近似精度の違いによる計算精度の比較・検証をまとめ,近似精度を落とした手法の有用性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,有限変形・異方性回転硬化下負荷面Cam-clayモデルの定式化のために,地盤材料の力学特性を学び,構成則の理論構築に取り組んだ.既往の有限変形モデルである千田ら(2013;応用力学論文集)のモデルに基づいて,超弾性構成則や内部変数の発展則の改善を行うことで,サイクリックモビリティの表現性能を向上させることができた.一方で,このモデルに採用している下負荷面は,逆負荷・再負荷特性を正確に考慮していない初期下負荷面であるため,より精緻に繰返し負荷挙動を表現できる拡張下負荷面の概念を取り入れるべきである.本研究では,拡張下負荷面に基づく乗算分解型有限変形モデルの構築が目的であり,このモデル構築は当初の研究計画においては本年度中に完了するはずであったが,現在はそこまで至っていない. 拡張下負荷面を導入したモデルの構築を行うには,内部変数として相似中心の移動則を追加する必要があり,これによりモデルはさらに複雑化すると考えられる.したがって目標とする弾塑性モデルの構築に先立って,初期下負荷面モデルを採用した既往の有限変形モデルの定式化の見直しや改良,性能評価・妥当性について十分に検証を行い,繰返し載荷に伴い,有効応力がゼロへと近づき計算が不安定となる領域においてもロバストに応力計算できるようにする必要があると考え,本年度はこれらに取り組んだ.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,現在理論構築している有限変形モデルにおいて,拡張下負荷面の概念を取り入れ,更に繰返し負荷挙動の表現性能を向上させるつもりである.具体的には,相似中心の移動則を導入し,相似中心の発展則を適切に定めることにより,逆負荷・再負荷挙動を精緻に表現可能なモデル構築を目指す.また,構築したモデルの性能評価として,既往論文の実験結果の再現解析などを行い,モデルの妥当性・有用性を検証する. さらに,構築したモデルに基づいて,液状化判定基準となる数理的条件を材料不安定の観点から導き出し,その特異性を調べることで液状化判定の指標を与える.そのためには,土粒子骨格の挙動と,間隙水圧の双方を考慮する必要があるが,まずは簡単のために,土粒子骨格のみを考慮して,ダイレイタンシーによる体積変形に関するひずみテンソルのクリティカルモードに着目する.その後土粒子骨格の挙動と,間隙水圧の双方を考慮したクリティカルモードについて検討する.
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