2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of solution to nutrition problem with intestinal bacteria
Project/Area Number |
18J21116
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増岡 弘晃 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 腸内細菌 / 低タンパク質適応 / 肥満 / パプアニューギニア / ラオス / 近代化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 「低タンパク質適応」と腸内細菌叢の関係についての研究 本年度は、主に低タンパク質がSPFマウスの腸内細菌叢に与える影響を調べた。本研究はパプアニューギニア高地人の糞便での動物実験実施以前に、低タンパク質食を28日間与えた場合の一般的な身体および腸内細菌叢の応答の評価のために実施したものである。これまでに実験開始時と終了時の2地点についてのみ腸内細菌叢の16S rRNA sequence解析を行っていたが、今年度は7日目・14日目・21日目の3地点を追加解析した。その結果、低タンパク質群では、尿素分解に関わる酵素であるウレアーゼを持つとの報告がある数種の細菌の増加が明らかになった。この結果より、タンパク質欠乏と腸内細菌叢の関連が改めて示唆された。
2. 「肥満」と腸内細菌叢の関係についての研究 本年度は、乾季である2019年3月に行ったサンプリング調査で得られた、村落Bにおける70サンプルおよび村落Cにおける99サンプルのDNA抽出を行った。昨年度に解析した雨季の村落A・Bのサンプルと合わせて、16S rRNA 遺伝子配列に基づいた分子系統解析を行った。その結果、山岳地域である村落Cでは腸内細菌叢の多様性を示す指標 (observed OTUs, ACE, Chao1, Shannon’s index)が他地域と比して有意に高いことが明らかとなった。また、腸内細菌叢の菌種組成の比較では、Genusレベルの解析において、村落CはPrevotella属を含む9種の菌属が豊富である一方で、Bacteroides属を含む15種の菌属に乏しいことが示された。加えて、食事の摂取頻度と菌種組成のデータを用いて、Canonical Correlation Analysis (CCA) を行い、数種の食事項目、特に野生由来の植物の摂取が菌種組成に大きく影響を与える可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、主に論文化に必要となるデータの蓄積を行った。「低タンパク質適応」の研究では、SPFマウスを用いた低タンパク質食実験において、これまでに解析していなかった地点の腸内細菌叢解析を追加で行い、不足していたデータを得た。現在、SPFマウス実験の研究結果はScientific Reportsにて査読が行われている。 また、ラオスの研究については、サンプリング調査で採取したすべての糞便サンプルのDNA抽出および16S rRNA amplicon sequencingが終了した。現在、他のデータとの相関解析などを行っており、本研究は順調に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
パプアニューギニアの研究については、引き続き「低タンパク質適応」を担う細菌の絞り込みを行う。加えて、低タンパク質飼料を与えた際に、どのような菌種がどのような時系列で変動しているのかを調べるために、2019年度にSPFマウスのサンプルで行った解析と同様にして、これまで解析を行っていなかった地点の腸内細菌叢解析を追加で行う予定である。 一方、ラオスの研究については、2019年度までに抽出したDNAを用いて、より高度な解析手法であるメタゲノム解析などを用いて、腸内細菌叢の持つ機能組成についても詳細に調べる予定である。これまでに得られたデータと合わせ、ラオス山岳民族の腸内細菌叢の持つ役割についてさらに詳しく調べる予定である。
|
Research Products
(2 results)