2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J21135
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松葉 義直 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 長周期波 / 非線形干渉 / UAV / ステレオ / 沿岸過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸部での長周期波の発達・減衰過程を再現しうる次世代型波浪推算モデルの構築のためには,長周期波の挙動の詳細な把握が極めて重要である.そこで本年度では,主に波高計やUAVを用いた現地観測,および台風等の被災調査から,現地における沿岸部での長周期波の挙動の分析を中心として研究を進めた.また並行して,より詳細な波浪観測のために,UAVを用いた沿岸域観測手法の構築も進めた.得られた主要な実績としては以下のとおりである. 1.急勾配海浜およびステップ型海浜を要する平塚海岸での水位変動観測データを用いて平常時の長周期波の挙動分析を行った.結果,風波およびうねり成分の入射に伴うステップ上での長周期波の発達を確認し,さらに非線形分散波モデルを用いた再現により詳細な分析を進めた.観測された長周期波は潮位と逆位相で増幅するという,比較的勾配の緩い海浜部での既往研究とは全く逆の結果を得た.これらの潮位による変動は,急勾配斜面による長周期波の反射により,単純な水深の減少による非線形性の増大によって説明されうることが分かった.これらの結果は,観測結果の少ない特殊な地形での非線形干渉の分析として極めて重要なものであるといえる. 2.沿岸部で時空間に高密度な波浪観測を低コストに行うことを目的として,同種のUAVを二台用いたステレオ視による砕波帯の観測手法を構築した.その際にはコンピュータビジョン分野に広く用いられる画像処理手法や独自に構築した毎時のカメラ位置の推定手法を応用することで,安定的な観測手法の構築を目指した.結果,得られた水位変動は波高計による観測結果をおおむね再現することに成功した.以上の結果は連続的に動くUAVを用いて動く対象物の形状を推定するという今までに類を見ない技術の可能性を示したものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように,本年度開始時において目標としていた波浪観測に基づく長周期波挙動の分析をすすめ,特徴的な地形をもつ浅海域での観測データから貴重な知見を得ることができた.今後次世代型波浪推算モデルの構築のためには,海底地形や波浪条件に基づいた長周期波の挙動の整理が必要となるため,本年度の成果は極めて重要といえる.また,異なる波浪条件,特に観測の困難な高波浪擾乱時のデータとして,2017年台風21号および2018年台風21号での波浪観測データの入手および被害調査をすでに行っており,分析を進めている.これらの結果からは既往研究と比べて極めて大きい長周期波の発達・減衰が確認できており,沿岸部被害に長周期波が大きく影響した可能性を示唆するものである.これらの結果は,今後の沿岸部での非線形過程の把握に有用であることに疑いはない. また,これまで進めてきた従来の波高計を用いた波浪観測に加え,さらに時空間に高解像な波浪観測を目的として,UAVとステレオ測量手法を応用したリモートセンシングによる砕波帯における波浪観測手法を構築することが出来た.本手法についてはまだ改良の余地があるものの,昨今のUAV技術の高まりによってより実用化が十分に期待されうるものであり,沿岸部での非線形過程の詳細な理解に応用されうる. 以上のように,本年度では複数海域での長周期波の発達・減衰過程の分析を進めることが出来たうえ,新技術を応用した波浪観測技術の開発を進めることが出来た.これらはすべて本研究の目的とする次世代型波浪推算モデルの構築に向けて必要なステップでありおおむね計画通りに順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は現在得られている高波浪擾乱時のデータについて同一海岸部における平常時の波浪データと比較することで,高波浪時の長周期波の特性の分析を進める.また,現状のデータは比較的期間の短いものであるため,一部本年度で得られたステレオ技術を併用しながら,本年度では時空間により高密度かつ長期的に進める予定である. また,従来の計画では,現地調査では得ることが出来ない詳細なデータを得ることを目的とした,二次元波浪モデルの構築を進める予定であった.このモデルとしては非線形分波方程式を用いた位相解像モデルを念頭に置いていたが,研究過程において高波浪時においては当初想定していたものよりも広域での計算が長周期波発達の再現には重要であることがわかり,擾乱時の再現に用いるためには計算負荷の観点から位相解像モデルのみでは非現実的であることが判明した.そのため,まずは位相解像モデルと位相平均モデルを結合した中程度の領域を対象としたモデル構築を進める.そのうえで,必要に応じ,より小さな領域を対象として,現状用いてきた一次元波浪モデルを拡張させた二次元の位相解像モデルの構築を進める. そして最終的にはこれら現地観測結果とモデルによる分析から得られた知見を海底地形や波浪条件に応じて整理し,長周期波の挙動を説明する上で重要となるパラメータを抽出し,計算負荷の小さい位相平均モデルの沿岸域への拡張を狙う.
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[Presentation] FIELD STUDY OF CONTRASTING BEACH RECOVERY PROCESSES OBSERVED IN NAMI-ITA and KIRIKIRI COASTS AFTER THE 2011 TOHOKU EARTHQUAKE2018
Author(s)
Kojima, Y., Tajima, Y., Matsuba, Y., Shimozono, T., Terasawa, T., Abe, K.
Organizer
36th International Conference on Coastal Engineering
Int'l Joint Research
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