2019 Fiscal Year Annual Research Report
長鎖ノンコーディングRNAを介した遺伝子発現制御による霊長類特異的脳機能分化
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18J21142
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
亀田 朋典 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / ノンコーディングRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
公共のヒト神経幹細胞とマウス神経幹細胞のトランスクリプトームデータを比較解析し、ヒト神経幹細胞に高く発現しているmRNA-pancRNAペアを20同定した。その中でマウスでは小脳に高発現し、小脳の発生に重要とされている転写因子MEIS1-pancMEIS1ペアに着目し、神経幹細胞での機能解析を行った。 iPS細胞由来ヒト神経幹細胞株AF22を用いて、MEIS1-pancMEIS1ペアの機能を調べた。shRNAを発現するレンチウィルスを用いてまずMEIS1 mRNAをノックダウンしたところ、神経幹細胞の増殖が著しく抑制された。次にpancMEIS1をノックダウンしたところ、パートナーのMEIS1 mRNAの発現が減少し、神経幹細胞の増殖が抑制された。このことから、pancMEIS1はヒト神経幹細胞においてMEIS1 mRNAの発現を正に制御し、細胞増殖に関与していることが明らかになった。 ヒト神経幹細胞で高く発現しているMEIS1がマウス神経幹細胞の増殖・分化に影響を与えるのかを調べるために、子宮内電気穿孔法を用いてマウス胎生期大脳皮質神経幹細胞にMEIS1を強制発現させ、神経幹細胞の挙動を免疫染色により評価した。胎生13日目の脳室帯神経幹細胞に子宮内電気穿孔法を行ったところ、2日後にMEIS1強制発現により脳室下帯と中間帯における神経幹細胞マーカーPAX6陽性細胞の割合が増加し、増殖能も上昇していることを見出した。さらに3日後にはコントロールでは脳室下帯・中間帯にほとんどPAX6陽性細胞が存在しないのに対し、MEIS1強制発現によりPAX6陽性細胞が見られた。これらの結果からMEIS1の高発現がマウス神経幹細胞の増殖と幹細胞性の長期化に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、期待通りに研究が進展したと考える。まずトランスクリプトーム解析から候補遺伝子を絞り込むことに成功した。絞り込んだ遺伝子の中でMEIS1に関してヒト神経幹細胞においてpancRNAをノックダウンしたところ、確かにパートナーのmRNAの発現減少がみられた。さらにMEIS1遺伝子あるいはpancMEIS1をノックダウンしたところ、ヒト神経幹細胞における増殖能の低下が見られた。反対にMEIS1遺伝子を胎生期マウス大脳皮質神経幹細胞に強制発現したところ、神経幹細胞の増殖を促進し、幹細胞状態を長引かせるという興味深いデータも得られた。この結果は霊長類特異的にノンコーディングRNAを獲得したことが標的のmRNAの発現を増大させ、大脳皮質拡大に影響することを示唆している。現在、発生過程の大脳層構造形成を模倣する大脳皮質三次元培養法を用いてMEIS1による霊長類大脳発生過程への影響を詳細に解析しており、最終年度の研究進展にも大いに期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
CRISPR/Cas9システムを用いてマウスES細胞においてマウスMeis1プロモーターをヒトMEIS1プロモーターと入れ替え、MEIS1の発現誘導と神経幹細胞の挙動を大脳皮質三次元培養法を用いて評価する。またプロモーターを入れ替えた際のマウスMEIS1プロモーターのエピゲノム変化を調べ、RNA依存的遺伝子活性化機構のメカニズムを解析し、責任因子を同定する。
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Research Products
(5 results)