2018 Fiscal Year Annual Research Report
k標本問題におけるベイズ的推定手法の決定理論的最適性と小地域推定問題への応用
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18J21162
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今井 凌 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 数理統計学 / 縮小推定 / ベイズ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
統計理論において、標準的な推定量(最尤推定量など)をそのまま使うより、その推定量をより限定されたモデルにおいて導出される推定量の方へ(データに応じて)近づけるような推定量を用いた方が、精度が改善するという現象が知られている。このような推定法はStein推定・縮小推定などと呼ばれるが、この縮小推定法を複数の多変量正規分布から独立に標本が得られているという設定において研究し、以下のような結果を得た。 1.複数の標本の母平均を同時に推定する場合において、平均に事前分布を仮定するベイズ的な発想で、個々の標本平均を、すべての標本をプールした総平均の方向へ縮小するような推定量をいくつか導出し、これらの推定量が精度の意味で標本平均をそのまま使う方法を改善することを示した。また、このうちのある縮小推定量については、これを一様に改善するような推定量は存在しないという最適性(許容性と呼ばれる)も示すことができた。 2.上記1と同じモデルで、平均を推定したいのは一つの標本に関してだけであるという場合について考えた。この場合、標本平均を他の標本も含めてプールした総平均の方向に縮小することは、関心のある平均について他の独立な標本のデータも用いて推定するということであり、精度の改善は起こりづらいと予想される。実際、上記1と同じくベイズ的な縮小推定量で精度を改良するものを導出したが、そのためには総平均の方向へ近づける度合いが上記1の場合より小さくなければならないことが示唆された。 これらの結果をまとめた論文をそれぞれ査読付国際学術誌に投稿し、改訂作業を経て2本とも掲載された。また、これらの論文に基づいて国内外の学会で口頭発表を行った。なお、以上の結果は久保川達也教授(東京大)とMalay Ghosh教授(Florida大)との共同研究に基づく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で導出した推定量については数値的な性能だけでなく統計的決定理論と呼ばれる枠組での最適性(ミニマクス性・許容性)も証明できており、研究結果をまとめた論文は2本とも国際学術誌Journal of Multivariate AnalysisとJapanese Journal of Statistics and Data Scienceに掲載することができた。特に前者は数理統計学のジャーナルとしてレベルの高いものとされている。また、国内では2018年度統計関連学会連合大会、国外ではCMStatistics 2018(イタリア、ピサ)といった学会において口頭発表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の正規標本の母平均の推定に関する決定理論的な結果を踏まえ、小地域推定や計量経済学の分野で応用上の要請から関心を持たれているようなモデルについて考察していく。また、本年度の研究のうち複数の標本の母平均を同時に推定するケースは行列正規分布の平均行列の推定問題としても定式化でき、そこでのEfron and Morris (Biometrika, 1972)型の推定量を考察する過程で先行研究の証明の不備を見つけているが、本年度中には適切な修正には至らなかった。この問題は次年度以降も継続して考察する予定である。
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Research Products
(6 results)