2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子の自己組織化を活用した迅速・簡便な光学純度決定マイクロアレイ・デバイスの構築
Project/Area Number |
18J21190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 由比 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 化学センサ / 分子認識 / ケモセンサアレイ / パターン認識 / 有機トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,医薬品を代表とする機能性光学活性化合物の光学純度決定チップ・デバイスの開発を行う.当該目的を達成する上で,初年度は以下の内容を検討した. 1)自己組織化現象を活用したケモセンサアレイの作製 ケモセンサアレイはパターン学習と組み合わせることで,標的サンプル中に含まれる成分・その濃度を正しく定量的に識別することができる.昨年度は,一例として食品や飲料に含まれる糖類を検出対象とし,市販試薬を混合するだけで簡便に調製できる比色ケモセンサアレイを作製した.本センサアレイは簡便に作製できるだけでなく,混合溶液中における正確な糖類の識別を達成した. 2)低電圧で駆動する電解質ゲート型有機トランジスタの作製およびそのセンシング能評価 有機トランジスタ (OTFT) を用いて,体液や環境水中でのセンシングを行う場合,標的化学種の検出は水系媒質中で行わなければならない.そこで,昨年度はOTFTの低電圧駆動化と分子認識場のデバイス中への集積化を達成するため、電気二重層キャパシタを活用した電解質ゲート型OTFTセンサ (EG-OTFT) デバイスの作製を試みた.具体的取り組みとして,カルボキシ側鎖を有する高分子半導体を活性とし,センサデバイスの作製を行った.本EG-OFETは0.3 V以下の超低電圧駆動を達成するとともに、ヒステリシスなく繰り返し測定に耐えうる安定性を有することが確認されたため,続いて分子認識調査を行った.一例として,ヒスタミン添加に伴うトランジスタ測定を行ったところ,濃度増大につれてドレイン電流値の増加が観測された.また,他のアミン類に対する選択性調査を行った結果,ヒスタミン>>プトレスシン>チラミン>ヒスチジンの順に応答することがわかり,ゲストのアミノ基数の違いによるわずかな化学的差異を読み出すことに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
簡便な光学純度決定チップ・デバイスの開発に向け,さらに以下のような工夫を行った. 1)マイクロアレイチップの作製および画像パターン認識による定量分析 分析化学的観点から,当該ケモセンサアレイを実用化する場合,オンサイトでの検出は目下の課題であり,チップ化はその課題解決策になり得る.そこで,一例として,国際がん研究機関によりグループ2A (ヒトに対する発ガン性を有する疑い有) に分類されている除草剤グリホサート (GlyP) 検出を指向した蛍光センサアレイチップの作製を試みた.チップの作製に,ヒドロゲルを使用し,ロボティックディスペンサーを用いて,迅速かつ再現性高くガラスチップ上に塗布 (200 nL/well) した。本チップはわずかなサンプル量で作製できるだけでなく,持ち運びできるほか,洗浄による繰り返しの使用も期待される.続いて,GlyPの濃度によって変化する光学応答パターンは,カラーフィルター付のCCDカメラにより撮影され,得られた画像パターンを,パターン学習させることにより,大型の分光器を用いずとも撮像するだけで簡便にGlyP検出を達成した. 2)分子認識場の集積化による固液界面でのセンシング EG-OTFTの活性層となるカルボキシ側鎖を有する高分子半導体に,金属イオンを配位させ,分子認識部位とし,GlyPの検出を行った.さらに,本結果を用いて蛍光センサアレイチップとの比較検討を試みた.当該デバイスは,GlyPの捕捉に伴い,数μMの濃度領域においてトランジスタ特性の変化が得られた.また本デバイスは高感度蛍光センサと同等・またはそれ以上の感度を有することがわかった.本結果から,カルボキシ側鎖を有する高分子半導体の側鎖に分子認識機構を化学修飾することで,様々な標的種に対する分子認識場を簡易に構築できることを見出した.以上の理由により,本研究はおおむね順調に進展しているとできる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は,ケモセンサアレイおよび有機トランジスタ型センサの両センサにおいてセンシングシステムの構築を行った.今年度は,本研究の目的であるキラルゲストをターゲットに調査を行っていく.超分子化学および分析化学において,キラル化合物の検出は難度が高い課題であるため,ホストレセプタの設計は慎重に行う必要がある.そこで,これまでの知見に基づき,まずは (ケモセンサアレイ側) 合成的手法を用いずに市販試薬を混ぜるだけでキラルレセプタを調製する,(OTFT側) 高分子半導体のカルボキシ側鎖に,キラル認識部位をワンステップで化学修飾しキラルデバイスを作製する. この両アプローチで,簡易的手法によるキラル認識場の構築を行い,その後,キラルゲストに対するそれぞれの分子認識能を光学的手法および電気計測により評価し,光学純度を決定する.また,複雑な構造のゲスト種に対しては,キラルレセプタを合成する必要があるため,上記のアプローチと平行して,新規キラルレセプタの合成を進める.
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Remarks |
発明大賞 (東京大学産学協創推進本部より授与),2019年2月 Poster Award (Chinese Chemical Societyより授与), 2018年11月
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Research Products
(15 results)