2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J21195
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小口 舞 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 一次繊毛形成 / Rab34 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、一次繊毛(シリア)形成を制御する新規候補Rabの探索を行った。ヒト網膜色素上皮に由来するhTERT-RPE1細胞を用いて、ヒトに存在する全てのRabに対する網羅的なノックダウンスクリーニングを行った結果、候補分子としてRab34を同定することに成功した。次に、hTERT-RPE1細胞を用いてRab34のノックアウト細胞株を作製したところ、Rab34のノックダウンと同様に一次繊毛形成の抑制が観察された。この一次繊毛形成の抑制はRab34の再発現により回復することから、オフターゲット効果によるものではないことが確認できた。他の細胞種でもRab34が一次繊毛形成に関与するのか、さらにマウス胚性繊維芽細胞(NIH-3T3)及びイヌ腎臓尿細管上皮細胞株(MDCK-II)を用いて検討した。その結果、NIH-3T3細胞でのみRab34のノックアウトによる一次繊毛形成の抑制が観察された。以上の結果から、Rab34はhTERT-RPE1細胞やNIH-3T3細胞のような極性を持たない細胞での一次繊毛形成に関与していることが示唆される。 次に、Rab34のノックアウト細胞株を用いて一次繊毛形成以外の細胞機能への影響を確認したところ、細胞小器官の形態や、細胞周期、細胞増殖を制御するmTORC1の活性には異常が見られなかったことから、Rab34のノックアウトによる一次繊毛形成の抑制は副次的なものではないと考えられた。 最後に、Rab34の下流で働くエフェクター分子の探索も行い、その候補の一つであるRILPのノックアウトにより一次繊毛形成が抑制されるという結果も得られている。以上の結果から、RILPはRab34と協調して一次繊毛形成を制御する可能性が極めて高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一次繊毛(シリア)形成を制御する新規候補Rabを探索するため、ヒト網膜色素上皮に由来するhTERT- RPE1細胞を用いて網羅的なノックダウンスクリーニングを行い、候補分子としてRab34を同定することに成功した。hTERT-RPE1細胞を用いてRab34のノックアウト細胞株を作製したところ、Rab34のノックダウンと同様に一次繊毛形成の抑制が観察された。この一次繊毛形成の抑制はRab34の再発現により消失することから、オフターゲット効果によるものではないことが確認できた。次に、Rab34のノックアウト細胞株を用いて一次繊毛形成以外の細胞機能への影響を確認したところ、細胞小器官の形態や、細胞周期、細胞増殖を制御するmTORC1の活性には異常が見られなかったことから、Rab34のノックアウトによる一次繊毛形成の抑制は副次的なものではないと考えられた。さらに、Rab34の下流で働くエフェクター分子の探索も行い、その候補の一つであるRILPのノックアウトにより一次繊毛形成が抑制されるという結果も得られている。以上の結果から、RILPはRab34と協調して一次繊毛形成を制御する可能性が極めて高いと考えられ、期待以上の研究の進展があったと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、一次繊毛は幾つかの段階を経て形成されることが明らかになっている。そこで、Rab34が一次繊毛形成のどの段階に関与しているのかを明らかにするため、Rab34のノックアウト細胞株を用いて、既存の一次繊毛形成時に働くタンパク質のうち、IFT20、IFT88、CP110、CEP83の局在を観察した。これまでの解析では、野生型細胞とRab34ノックアウト細胞の間でこれらのタンパク質の局在には変化が見られていないことから、Rab34はこれらのタンパク質が関与する段階よりも後期の段階に関与している可能性が高いと考えられる。引き続き、一次繊毛形成の後期の段階で働くタンパク質についても検討を行う予定である。 また、Rab34の下流で働くエフェクター分子を同定するため、既報のRab34エフェクター候補分子であるFolliculinのノックダウン、RILPとRILP-L2のノックアウトを行った。その結果、Folliculinのノックダウン及びRILP-L2のノックアウトでは一次繊毛は正常に形成されたのに対し、RILPのノックアウト細胞株では一次繊毛形成の抑制が観察された。以上の結果から、RILPがRab34と協調して一次繊毛形成を制御する可能性が高いと考えられ、両者の結合の一次繊毛形成における重要性について次年度以降も解析を続ける予定である。
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