2018 Fiscal Year Annual Research Report
元素の特性を活かした新たなクロスカップリング反応の開発
Project/Area Number |
18J21229
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
YANG ZEKUN 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 不活性結合切断反応 / π共役高分子 / アリールエーテル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は1.不活性な CーO / CーN 結合切断を経由するπ共役系高分子重合反応の開発と2.アンモニウム塩とアルコール/フェノールを基質とする触媒フリーのエーテル合成法の開発の2つの課題に集中した。研究の詳細内容を以下に示す。
1.グリニャール試薬とアリールエーテルをモノマーとして用いて、市販のニッケル触媒存在下、トルエン溶媒中において、温和な条件下進行する重合反応を開発した。本反応を用いて、様々なπ共役高分子を高収率、高数平均分子量にて合成した。また、有機リチウム試薬とアリールエーテルとの重合反応やグリニャール試薬とアンモニウム塩との重合反応の開発も成功した。さらに、本手法で合成した高分子の光・電子特性の基礎評価も行いた。天然に多く存在するアリールエーテルやアリールアンモニウム塩を重合反応に用いることにより、合成がより安価かつ低毒性になり、π共役高分子に導入できるモノマーの可能性を増やすことも期待できる。
2.塩基(KOtBu/KHMDS)の存在下、アニリンから容易に製造されるアリールアンモニウム塩とアルコール/フェノールを基質とするCーO 結合形成反応を開発した。本反応は、遷移金属触媒を必要としない、室温で数時間以内に効率的かつ選択的に進行できる。天然物や医薬品に多く存在している、NR2 または OH 基を有する化合物を反応に用いた結果、いずれも高収率にて生成物を与えた。本手法は様々な機能性分子の調製及び誘導体化に適用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は CーO/CーN 結合切断型クロスカップリング反応の開発に集中した。フェノール/アルコールやアニリン/アミンは、天然物・医薬品・機能性分子などに遍在する構造単位であり、安価に入手可能である。一方、π共役系高分子は、優れた光・電子機能を有するため、発光材料・センサー・光電変換材料など様々な分野で広く応用されてきた。今までπ共役系高分は主に有機ハロゲン化物を原料として合成されてきた。我々は、安定・安価で、容易に入手可能なアリールエーテルあるいはアニリン誘導体のCーO/CーN 結合を切断しながら重合反応を行う新反応開発に成功した。本手法は、天然物や医薬品、機能性分子に多く存在する高度に酸化された芳香族分子の利用法に新たな道を拓いた。本研究の成果はNature Commun. 誌に掲載され、Editor’s Highlights と ChemistryViews で紹介された。また、アンモニウム塩とアルコール/フェノールを基質とする、CーN 結合切断を介するエーテル合成法の開発にも成功した。本反応は室温において、遷移金属フリーの条件下、簡便かつ迅速に進行し、様々な官能基を有する基質に適用可能である。本研究の成果はAngew. Chem. Int. Ed. に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、昨年度に引き続きCーO/CーN 結合切断型反応の開発を続く予定です。新手法及び新規反応機構の導入をより一層重視することにします。
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Research Products
(5 results)