2018 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージ再教育と抗体医薬ADCP活性増強を両立する画期的ナノキャリアの創製
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18J21249
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
李 昊 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍随伴マクロファージ / 抗体依存的細胞貪食 / 抗体医薬 / ドラッグデリバリーシステム / TAM再教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトBリンパ球細胞Raji、ヒト上皮がん細胞A431、あるいはヒト乳がん細胞SKBR3をマウス骨髄由来マクロファージ細胞と共培養し、さらにそれぞれに結合する抗体医薬(Rituximab,Cetuximab,Trastuzumab)を添加し、ADCP能を測定した。その結果、いずれのがん細胞に対しても、M1マクロファージにおいてM2より強いADCP効果が見られた。そして、マウス骨髄から単球細胞を取得し、Raji細胞の培養上清で誘導培養し、in vitroでTAMの誘導を行った。TAMにLPSとIFNγを添加し、M1への再教育を行った。再教育したTAMのADCP能はM1と同程度になった。貪食作用を抑制する細胞内シグナルを担うプロテインホスファターゼSHP-1のリン酸化程度を測定した。その結果、M1マクロファージはM2よりSHP-1のリン酸化が顕著に抑制されていた。以上のことから、M1マクロファージは貪食作用を抑制するシグナルが解除されたため、より強いADCP能を持つことになったと考えられる。赤血球及び赤血球に含まれるヘミンはマクロファージを再教育できるかどうかを検討した。Raji細胞に対するADCP効果を評価する実験で、ヘミンや赤血球で誘導したマクロファージはM1型と同程度なADCP能となった。以上の結果から、ヘミンや赤血球がマクロファージを再教育し、ADCP効果を高めることが可能であり、抗体医薬のADCP効果を増強するドラッグデリバリーシステムになるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、マクロファージの分化状態M1とM2におけるADCP効果の違いに関して集中的に解析を行った。その結果、M1マクロファージは貪食作用のカギを担う抑制シグナルの活性化が低いことを見出し、TAMをM1型へ再教育することにより、ADCP効果が上昇することが確認した。さらに、TAMを再教育できるナノキャリアであるGL-BNCまたはR848内封リポソームは、in vitroでADCP効果を増強できたので、最終的な目標であるマクロファージ再教育と抗体医薬ADCP活性増強を両立するナノキャリアの創製に向けた重要な段階をクリアしたと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、in vitroでM1とM2マクロファージのADCP能の比較を行った、更には、TAM再教育の可能性を検討した。次のステップとして、TAM再教育と抗体医薬ADCP活性増強を両立するナノキャリアの創製を中心に研究を進めていく。また、創製できたナノキャリアのTAM再教育能、ADCP活性増強能をin vivo実験で確認する。 BNC(ヒトB型肝炎ウイルスの外殻タンパク質から構成するナノ粒子)の表面にプロテインG由来の抗体Fc結合ドメインとプロテインL由来の抗体Fab結合ドメインのタンデム分子を提示させたGL-BNCが、抗体の存在下で凝集し、ファゴサイトーシス経路によってマクロファージに積極的に取り込まれることを平成30年度までに明らかにした。GL-BNCはマクロファージ標的化ドラッグデリバリーシステム(DDS)として有望である。今年度は、GL-BNCにはTAM再教育能があるかどうかを検討する。また、既存の免疫活性剤であるR848で誘導したマクロファージはM1型になることが報告されたが、ADCP効果の上昇に関する研究は未だに報告がない。次年度は、TAMを選択的に送達可能なDDSナノキャリアにR848を封入し、TAMのADCP効果を上昇することが可能であるかどうかを検討する。
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