2018 Fiscal Year Annual Research Report
多層的遺伝子発現情報解析と機能解析の統合による胃癌の新規治療標的同定と治療法開発
Project/Area Number |
18J21308
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
河本 知大 徳島大学, 大学院医科学教育部, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 胃癌 / 遺伝子発現 / 分子標的 / 癌促進遺伝子 / 分子マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
The Cancer Genome Atlas (TCGA)やGene Expression Omnibus(GEO)などの公開データベース情報を利用し、予後関連発現変動遺伝子の探索から検証までを行なえる独自の多層的解析により同定された胃癌促進遺伝子候補CLDN6について、悪性形質誘導の分子機構を解明する目的で、公開データを用いた更なる解析とCLDN6高発現胃癌細胞株を用いた機能解析を行った。 TCGAとGEOの胃癌データそれぞれで、遺伝子発現分布パターンを考慮したCLDN6 mRNAの発現量の評価(High/Low group)と臨床病理学的情報との関連を解析すると、CLDN6はIntestinal typeに分類される腫瘍で高発現する傾向にあった。CLDN6 mRNAの発現量とLauren分類(Intestinal/Diffuse type)を用い4群に分類して生存解析を行ったところ、Intestinal type胃癌ではCLDN6高発現群は低発現群に比べ予後が悪く、その程度は一般に予後不良なDiffuse typeと同じかそれ以上であること、Diffuse typeではCLDN6発現の予後への影響は少ないことが明らかになった。 また、CLDN6高発現胃癌細胞株(NUGC3,AGS)でCLDN6をノックダウンすると、増殖能や移動・浸潤能の低下が見られるが、NUGC3でのCLDN6ノックダウン時の網羅的な遺伝子発現変動を検討したところ、YAP1遺伝子を転写共役因子とするHippoシグナル系の下流遺伝子群に発現変動遺伝子が集中していた。また、Hippoシグナル系ではYAP1のリン酸化調節によりその局在を変化させ下流の標的遺伝子の転写を調節することが知られているが、CLDN6ノックダウンではYAP1 mRNA量が大きく低下しており転写レベルの調節があることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多層的解析により同定された胃癌促進遺伝子候補CLDN6の表現型解析をノックダウン実験によって行い、この系を主に用いて表現型解析ならびに網羅的発現解析による標的遺伝子・パスウェイ探索を実施し、CLDN6による悪性形質獲得に繋がっているであろうYAP1を介した下流のパスウェイの同定に成功した。次年目以降、さらにCLDN6と下流のパスウェイをつなぐ分子機序を解明することで、治療法的探索へとつながることが期待される。臨床検体を用いた免疫染色によるCLDN6蛋白発現と予後との関連の検証も平行して進めており、蛋白レベルでの検証も進んでいる。 また、遺伝子発現分布パターンを考慮したカットオフ値による群分けが、CLDN6の生物学的意義や分子マーカーとしての意義の評価に有用であったことで、開発した多層的解析法による新規標的候補の探索の最適化の検証も進んだ。実際に国際共同研究においてこの方法を他の癌種に応用することで、特定の遺伝子変異で層別化した遺伝子発現と薬剤抵抗性の検討を行なうこともできており、様々な癌種における新たな癌関連遺伝子の同定に繋がることが期待される。 これらのことから、当研究計画はおおむね順調に進捗していると評価することができ、次年度以降も更なる進展が見込まれる。
|
Strategy for Future Research Activity |
公共データベース上の遺伝子発現データや、マイクロアレイを用いて得られたCLDN6高発現胃癌細胞株におけるCLDN6ノックダウン時の網羅的mRNA発現変動パターンのデータなどを用い、機械学習を取り入れたパスウェイ・ネットワーク解析をバイオインフォマティクス的手法を用いて行う。それらの情報解析により、CLDN6の上流もしくは下流に位置するノード分子やYAP1の転写を調節している分子、表現型形成に直結する分子を同定し、介入可能な新規治療標的遺伝子候補や薬剤候補を同定する。同定された候補遺伝子に関して、分子機能解析実験や免疫組織染色を用いた臨床病理学的意義の検討を行い、最も効果的なCLDN6関連治療標的を選択し、薬剤の処理による表現型への効果の検討も並行して行う。さらに、高感度癌関連候補遺伝子探索パイプライン、in vitroでの効率的細胞内機能評価による評価実験系やゲノム疫学情報を組み合わせることにより、CLDN6以外の新規治療標的遺伝子候補を同定し、候補遺伝子の腫瘍での発現や局在を免疫組織染色で評価し、各遺伝子発現の臨床病理学的因子との関連や各分子間の発現の相関の評価から、同定した各治療標的候補の胃癌の癌化における再現性、特異性を明らかにする。
|
-
-
[Journal Article] ADAM17 selectively activates the IL‐6 trans‐signaling/ERK MAPK axis in KRAS‐addicted lung cancer2019
Author(s)
Saad MI, Alhayyani S, McLeod L, Yu L, Alanazi M, Deswaerte V, Tang K, Jarde T, Smith JA, Prodanovic Z, Tate MD, Balic JJ, Watkins DN, Cain JE, Bozinovski S, Algar E, Kohmoto T, Ebi H, Ferlin W, Garbers C, Ruwanpura S, Sagi I, Rose-John S, Jenkins BJ8
-
Journal Title
EMBO Molecular Medicine
Volume: 11
Pages: e9976~e9976
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-