2018 Fiscal Year Annual Research Report
感覚入力から摂食行動に至る神経回路機構の解明~嗅覚系をモデルにして~
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18J21358
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
塩谷 和基 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Tenia Tecta / 嗅覚 / 嗅皮質 / medial prefrontal cortex / 摂食行動 / 電気生理 / 光遺伝学 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
肉の焼けるこんがりと香ばしい香りに食欲が増進した経験は誰しもあるだろう。匂いが摂食行動を惹起することは経験的によくわかる。摂食行動を発現するための摂食モチベーションは、脳内の内側前頭前野(medial prefrontal cortex, mPFC)を中心とした回路によって作られていると考えられている。しかし、摂食行動のトリガーは感覚入力が引く。感覚入力がどのような回路機構で、mPFCを中心とした摂食モチベーション回路に関与し摂食行動を惹起するのか不明である。そこで、匂い(嗅覚)によって惹起される摂食行動をモデルとし、その神経回路機構を解明したいと考えた。嗅覚系は、他の感覚とは異なり、嗅覚情報が視床を介さずに、直接大脳皮質(嗅皮質)に到達する非常にシンプルな系である。嗅皮質の一部であるTenia Tecta (TT)はmPFCと直接の接続がある。これらのことから、嗅覚系をモデルとすることで、外界から入力される感覚入力が摂食モチベーションを惹起し、実際に摂食行動に至るまでの神経回路機構を明らかにすることを目的とする。 今年度では、匂いを用いたGo/No-Go学習課題をマウスに訓練させ、学習行動課題中のTTニューロンの活動の記録を行った。ニューロン活動の解析を行った結果、TTニューロンが匂い、報酬の期待時、報酬の獲得時等の様々なシーンに対して応答することが判明した。これらは、TTニューロンが単にボトムアップからの匂い情報をコードしているだけではなく、mPFCからのトップダウンの入力を受けることが示唆される。 また、TTが匂いで惹起される摂食行動の表出に必須であることを確かめるために、特定波長の光を照射することで興奮または抑制させるオプシンをTTニューロンに発現させる遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)の発現の条件検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、匂いを用いたGo/No-Go学習課題系の確立、電気生理学的手法を用いた学習行動課題中のTTニューロンの活動の記録、光遺伝学的手法の導入を行った。電気生理学的手法を用いて、Go/No-Go学習課題を訓練させたマウスのTTニューロンが単に匂い提示区間だけでなく、報酬の期待時、報酬の獲得時等の様々なシーンに対して応答することが明らかになった。これは、mPFCからのトップダウン入力を受けていると推察される。この発見は、mPFCからのトップダウン入力がTTでの演算を調整する役割を持つ非常に重要なものだと考えられ、大きな進歩だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
匂いで想起される摂食行動に対するTTの関与の検証を行うために、TTにオプシンを発現させ、学習行動課題時に光ファイバーを通じてレーザー光を照射し、マウスの行動にどのような変化が起こるのかを検証する。また、mPFCからのTTへのトップダウン入力の役割を明らかにするために、mPFCからTTへ投射するmPFCニューロンのみを光制御し、この経路が学習課題行動にどのように寄与するかを明らかにする。
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Research Products
(6 results)