2019 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロ原子架橋および酸化的環化反応による新規複素多環芳香族分子の効率的合成法開発
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18J21360
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
栗本 悠司 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Pd触媒 / フルオレノール / フルベン / C-H活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の特別研究員研究報告書で予定していたPd触媒を用いた分子内縮環反応によるフルオレノール誘導体の合成については、申請者の想定通りPd触媒の立体、電子的環境を適切に調整することで達成することができた。具体的には、基質の立体、電子状態に応じてPd触媒および配位子の組み合わせを変更している。 また今回申請者が開発した手法は、従来法ではフルオレノール誘導体ではなくクロメン誘導体のみが得られていた基質において、選択的にフルオレノール誘導体のみを得ることができるという特徴も有している。この選択性発現の理由は、基質に存在する活性の高いヒドロキシ基とPd触媒のメタラサイクルの形成を抑制し、芳香族上のC-H結合を活性化する様に反応条件を適切に調整しているためである。 更に、この選択的な合成の達成は従来法と本法を併せることで、一つの基質から様々なフルオレノール及びクロメン誘導体の合成が可能になったともいえる。また、本法では合成難易度が一般的に高いとされる電子不足な芳香環を有した基質においても、フルオレノール誘導体が選択的に得られることも明らかにしている。 また、得られたフルオレノール誘導体については、触媒量の酸を用いた脱水反応によって非芳香族であるフルベン誘導体への変換も達成している。 一方で9月から翌年2月までの半年間、ドイツへ海外渡航し有機電子移動化学に基づく分子変換反応の開発に従事することで当該分野における知見と技術を得た。今後、これらの知見・技術を元に、より汎用性の高い合成法の確立を目指していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者が開発したPd触媒を用いた分子内縮環反応を、炭素架橋されたビアリールに対して適用することでフルオレノール誘導体の合成に応用した。これまでに炭素架橋されたビアリールは、Pd触媒を用いた分子内縮環反応の条件に適用すると、フルオレノール誘導体ではなくクロメン誘導体へ選択的に変換されることが報告されていた。 この課題の解決策として、申請者がこれまでの研究で得た知見からPd触媒および配位子の組み合わせを、基質の立体、電子状態に応じて変更する手法を講じた。その結果、選択的にフルオレノール誘導体を合成する事に成功した。また、従来法では合成難易度の高いヘテロ環、電子求引性基を有した基質においても、本法は適用できることを見出している。 さらに得られたフルオレノール誘導体は、触媒量の酸を用いた脱水反応により、非芳香族であるフルベン誘導体へと変換できることも明らかにしている。 また、本研究の鍵反応の一つである遷移金属触媒を用いた縮環反応には、条件が些か過酷であるといった問題点があり、その改善策が確立できていないという現状にある。一方で、電気化学的手法には、一般的に比較的穏やかな条件下、反応が短時間で終結するといった利点がある。そこで、当該分野において最先端の技術を有するMainz大学へ研究留学し、研究活動に半年間従事することで知見と技術を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在遂行中の研究であるPd触媒を用いた分子内縮環反応によるフルオレノール誘導体の合成の更なる基質適用範囲の拡大を目指すと共に、合成した化合物の物性調査を行う予定である。 具体的には、従来法では合成が困難であり、興味深い物性が期待できるフッ素やニトロ基などの電子求引性基を有した誘導体の合成が可能かどうか調査を行っていく。 また、半年間の研究留学で学んだ知見と技術を活かして、電気化学的な手法による多環芳香族分子の新規合成法も開拓して予定である。研究留学中では直接電解法による合成法開発の知見と技術を得たが、当研究室では間接電解法による多環芳香族分子の合成法開発も行っているため、二つの方法論を軸に新規合成法の開拓を行っていく。具体的な研究案としては、ホスフィンオキシドの一電子酸化によるジアリールホスホールの電解合成を考えている。ジアリールホスホールは蛍光寿命が高いという特徴を持つため、近年では蛍光イメージングにも用いられる有用な分子である。そこで多様なホスホール誘導体の合成と、その物性解明を行っていくことも研究目標とし、現在研究を継続している。
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Research Products
(3 results)