2018 Fiscal Year Annual Research Report
Patient-Specific Parameter Estimation and Uncertainty Analysis in the Simulation of Cardiovascular System for Predictive Medicine
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18J21374
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尹 彰永 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 血流解析 / 1D-0D解析 / 低次元モデル / 患者個別モデル / 不確かさ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,血流解析の予測医療への展開に向けて,予測結果の信頼度を定量的に評価可能な患者個別血流解析の実現を目指すものである.本年度は,医用データの持つ不確かさが予測結果に及ぼす影響を定量化するための確率論的解析手法を構築することを目的とし,(1)適切な手法の検討・選定,(2)解析コードの実装・テスト,(3)試行的解析の実施を行った. まず,不確かさ解析の手法に関しては,当初の計画ではモンテカルロ法を用いる予定であったが,計算規模が膨大になることが予想されたため,手法の再検討を行い,多項式カオス法を用いることにした.実装においては,非侵入型の手法を採用し,従来の血流解析コードをそのまま活用しつつ,不確かさ解析の部分を前処理・後処理として加え一体化した.また,血流解析は複数回の実行が必要なため,多数のCPUに割り当てて同時実行できるようにした.以上により,当初の計画に比べ,10-100倍の性能の向上が見込まれた. 次に,内頸動脈に高度狭窄を有する症例を対象とし,医用データの不確かさを考慮した手術後予測の試行的解析を行った.現段階では,医用画像から取得した頸動脈・脳動脈の形状パラメータと,血流計測データから算出した血流量を患者個別パラメータとして用いており,これら全てが10%の不確かさを含むと仮定した.解析結果より,10%の不確かさでさえも,手術後の予測結果に大きなばらつきをもたらすことが示された.特に,最大の血流増加(高リスク)を示した狭窄側の脳血管で顕著なばらつきが見られ,医用データの不確かさを考慮しないと血流解析の予測能力が大きく制限されることが示唆された.このような予測結果の大きなばらつきは,主に狭窄径,前大脳動脈の直径,狭窄側の交通動脈の直径の不確かさに起因することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
手法とアプローチを変更したことに伴い,当初計画していたグローバル感度解析は実施できなかったが,感度解析と今後の不確かさ解析を当初の計画よりも効率良く体系的に行える環境が準備できた.また,試行的解析より,予測結果への影響度の高いパラメータがある程度特定できた.そのため,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において実装した非侵入型多項式カオス法を用いて,与えた入力パラメータをもとに狭窄手術後の脳血流の増分を予測する代理モデル(surrogate model)を構築する.そのための手順として,(1)グローバル感度解析によるパラメータ数の削減,(2)削減したパラメータ数での代理モデルの作成,(3)作成した代理モデルの精度検証を考えており,(1)から(3)までの手順を十分な精度の代理モデルが得られるまで繰り返す予定である. 代理モデルは特定患者のデータに合わせて構築することが一般的であるが,この方法では患者ごとの大規模な解析が必要となるため,実用を考えると現実的でない.そのため,本研究では,パラメータのランダム空間を広くとることで,どの患者にも対応できる代理モデルを構築するよう工夫する.これにより,一度構築した代理モデルを繰り返し使って,患者個別の不確かさ解析を短時間でモンテカルロ的に行うことが可能となる. また,本研究に用いる予定であるCT,MRI,超音波血流計測などの医用データに含まれる不確かさを定量的に評価し,今後行う予定の患者個別不確かさ解析にスムーズに移行できるよう準備する.
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