2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J21469
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
柿沼 亨祐 同志社大学, 心理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 教育心理学 / 動機づけ / フィードバック / ほめ / 努力 / 能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は能力ほめ・努力ほめがほめ手に与える影響について,①媒介変数についての検討(研究1),②調整変数についての検討(研究2a,研究2b)を実施した。 研究1では,能力・努力ほめが課題への興味に与える影響に対する媒介変数として増大的マインドセット (知能は変えることができるという考え) を測定した。大学生165名を対象として実験を行った結果,努力ほめの影響は見られなかったものの,能力ほめから課題への興味に対して有意な負の効果が示された。しかし,増大的マインドセットによる媒介仮説は支持されなかった。以上の結果から,課題の動機づけに対する能力ほめのネガティブな影響は直接的で無意識的な効果であることが示唆された。 研究2aでは,特に努力ほめに焦点を当て,努力ほめの効果が他者比較によって調整されている可能性について検討した。実験では,ほめに関する2群 (努力ほめ群と統制群) × 他者比較に関する2群 (他者比較あり群と他者比較なし群) の合計4群を設定して,実験参加者98名をいずれかの群に割り振った。分析の結果,いずれの変数に対しても,ほめの主効果・ほめと他者比較の交互作用はみられず,仮説は支持されなかった。 研究2bでは,努力ほめの効果がほめの特定性によって調整されている可能性について検討した。実験では,ほめに関する2群 (努力ほめ群と統制群) × 特定性に関する2群 (内容を特定してフィードバックをする特定群と全般的に行う全般群) の合計4群を設定して,実験参加者130名をいずれかの群に割り振った。分析の結果,課題への興味に対して,ほめと特定性の有意な交互作用がみられた。単純主効果検定の結果,特定群においてのみ有意差がみられ努力ほめ群の興味の値の方が統制群よりも高かった。以上の結果から,努力ほめは特定的に行われた場合のみ,ほめ手の動機づけに対してポジティブな効果があることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画について,予定していた研究1を実施することができ,続いて次年度に行う予定であった研究2も実施することができた。研究2aに関しては,仮説は支持されなかったものの,研究2bに関しては仮説通りの結果が得られ,努力ほめの効果について特定性という調整要因を明らかにした。これにより,これまで申請者が行ってきたほめ手に関する研究を発展させることができた。 研究発表に関しては,2つの国内学会,1つの国際学会で本研究にかかわる研究成果の発表を行った。論文投稿に関しても,現在2つの論文を国際誌に投稿し,現在査読中である。以上の理由から,研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究2bで得られた,努力ほめの効果に対する特定性の調整効果に焦点を当て研究を進める予定である。研究2bとは異なる統制群を用いてウェブ実験による追試を行った後,実際の対人場面を設定した実験室実験を行い,特定性の調整効果について更なる検討を行う。
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Research Products
(3 results)