2018 Fiscal Year Annual Research Report
センダイウイルスベクターを用いた心筋リプログラミング法の開発と分子機構の解明
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18J21479
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田村 文弥 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 心臓 / 再生 / リプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞実験系においてマウス線維芽細胞を用いた検討により心筋リプログラミング因子が組み込まれたセンダイウイルスベクター(SeV-GMT)の有効性を確認した。また、動物実験に関しては、マウス心筋梗塞モデルを用いた検討により、急性心不全におけるSeV-GMTの治療効果などを検討している。 また、当該年度においては心筋リプログラミングのメカニズムおよび促進作用についてセンダイウイルスベクター以外の材料・因子を用いた研究成果を得ている。 まず、線維芽細胞を用いたダイレクトリプログラミング法によるスクリーニングから、心臓中胚葉細胞を誘導する単独の因子としてTbx6を同定した。さらに、心臓中胚葉細胞が誘導されるメカニズムとして分化初期においてTbx6の発現が一過的に上昇することにより、心臓中胚葉への分化が決定づけられることが分かった。心臓中胚葉細胞からは心筋細胞に限らず血管細胞など心臓に寄与する種々の細胞を誘導することができるため、Tbx6を用いた新たな心臓再生技術が考えられる。 さらに、心筋リプログラミングを促進する低分子化合物をスクリーニングした結果、非ステロイド性抗炎症薬として用いられている既承認薬ジクロフェナクを同定した。従来の心筋リプログラミング法では、胎児の線維芽細胞に比べ、成体期あるいは老化した線維芽細胞では心筋の誘導効率が低下するという課題があった。これに対し、老化によって亢進したシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)およびプロスタグランジンE2(PGE2)による炎症経路をジクロフェナクが抑制することで、心筋リプログラミングにおける誘導効率を改善することが分かった。 以上の知見をもとに、センダイウイルスベクターを用いた心筋リプログラミングに対し、組み込む因子の最適化あるいは併用する化合物を検討することで、安全・簡便・効率的な心臓再生法の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度における研究課題の進捗について、慶應大学医学部で実験を行う予定であったが担当教員の異動に伴い研究拠点を筑波大学に移行している。そのため、実験活動を再開するにあたって研究室の移行期間が発生しており、実施状況としては当初の予定より遅れている部分が生じている。 細胞実験系においてマウス線維芽細胞を用いた検討により心筋リプログラミング因子が組み込まれたセンダイウイルスベクター(SeV-GMT)の有効性を確認したものの、ヒトの因子で心筋リプログラミングを行うなどといったヒト線維芽細胞における検討が未実施となっている。また、動物実験に関しては、マウス心筋梗塞モデルを用いた検討により、急性心不全におけるSeV-GMTの治療効果などを検討している。さらに、遺伝子改変モデルを用いた慢性心不全モデルマウスの確立も進めており、慢性心不全に対する心筋リプログラミングによる治療効果を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋リプログラミングに関する分子基盤を解明するにあたり、上記のような知見が得られている。 これらの情報をもとに、センダイウイルスベクターを用いた心筋リプログラミング法を確立することを目指す。また本手法では特に、臨床応用を考慮した際の課題が残っている。具体的にはヒトへ投与する場合に因子配列・ベクターを最適化すること、センダイウイルスベクターによって誘起されうる免疫反応をいかにして軽減するか、などが考えられる。よって今後はヒト細胞や大動物などを用いて安全な投与方法の検討、また生体内での免疫反応をいかにして軽減するか、といった問題点を克服する必要がある。
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Research Products
(2 results)