2018 Fiscal Year Annual Research Report
フェアリー化合物の菌類におけるホルモンとしての証明
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18J21506
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
伊藤 彰将 静岡大学, 自然科学系教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | フェアリーリング / コムラサキシメジ / AHX / ICA / APRT / プリン代謝経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェアリーリング惹起物質として、コムラサキシメジ菌糸体培養濾液から単離された2-azahypoxanthine (AHX) 及びimidazole-4-carboxamide (ICA) は分類学上の科に関係なく様々なキノコに内生していることが判明し、更に、多くのキノコの成長を制御していることが示唆された。このようにAHXとICAはこれまでに未同定であるキノコにおけるホルモンの有力な候補であり、ホルモンとして証明するべくコムラサキシメジを供試菌として、両化合物の生合成研究を行った。 先行研究によって、AHX及びICAはプリン代謝経路から生合成されることが判明している。その中間体である5-aminoimidazole-4-carboxamide-ribotide (AICAR) から、AHX及びICAの推定生合成前駆体であるAICAへの変換はadenine phosphoribosyltransferase (APRT) によって触媒されると仮説を立てた。そこで、大腸菌を宿主としてコムラサキシメジ由来APRT遺伝子を過剰発現させ、組換えタンパク質rLsAPRTを調製した。In vitro酵素活性試験の結果、AICAの生成が確認でき、LsAPRTがAHX及びICAの生合成における初発反応を触媒することが明らかになった。 AHX及びICAの生合成前駆体がAICAであるかを確認するために、2個の炭素が13Cで標識された安定同位体ラベル化AICAの取り込み試験を行った。ラベル化AICAを処理したコムラサキシメジ菌糸体抽出液をLC-MS/MSに供した結果、2個の炭素が13Cで標識されたAHX及びICAを検出することに成功し、AHX及びICAはAICAから生合成されることが明らかになった。現在、AICAからAHXの変換を触媒する酵素を探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はAHXやICA (以下、fairy chemicals, FCsと呼称する) がキノコにおける新規のホルモンであるという仮説を立てており、その仮説を支持する結果が得られ、更に、コムラサキシメジにおける両化合物の生合成経路の一部が明らかになったためである。FCsのキノコに対する活性に関する研究成果やコムラサキシメジにおけるFCsの生合成に関する研究成果は、論文を投稿予定である。更に、コムラサキシメジ由来APRTに関する研究成果に関しても論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要にも記したように、AICAからAHXの変換を触媒する酵素の探索を行う。AICAからAHXの反応を考えると窒素源の供給が必要になる。これまでの研究から、その窒素源はNO synthase (NOS) によってL-Argから生成するNOであることが示唆されている。すなわち、AICAからAHXの変換反応にはNOSが関与していると仮説を立てている。ゲノム解析の結果、コムラサキシメジにはNOS遺伝子が8個存在していることが判明した。これらNOS遺伝子のうち特に発現量が高かった2個のNOS遺伝子の全長クローニングを行い、大腸菌を発現用宿主としたNOSの機能解析を行ったが、現在までに酵素活性を確認できていない。今後は大腸菌発現系を再検討すると共に、酵母と昆虫細胞を宿主とした発現系を新たに構築する予定であり、活性型のNOSによってAICAからAHXの反応が起こるかを確認することが今後の課題である。
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Research Products
(2 results)