2019 Fiscal Year Annual Research Report
集合現象のダイナミクスを支える認知・生理プロセスとその神経基盤の検討
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18J21510
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒田 起吏 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | social information / group decision-making / speed-accuracy tradeoff / drift-diffusion model / consensus decision |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き今年度は、speed-accuracy tradeoff状況(速さと正確さのトレードオフがある状況:SAT状況)で人がどのように社会情報を処理しているかを実験室実験により検証した。この実験では、参加者の眼球運動をアイトラッカー(Tobii Pro Spectrum)によって測定した。また、視線データを予測変量とする認知モデルによる分析を行うことで、ある参加者が任意の時点でどのような内的判断を持っているかをモデリングした。実験の結果、昨年度の実験と同様に、(i)2者状況では判断が拙速になること、(ii)社会情報とは独立に意思決定しつつも、50-50に近い重みづけをすることが多いこと、(iii)社会情報の良し悪しを判別できることがわかった。この実験結果は第12回日本人間行動進化学会で発表され、進化心理学・数理生物学の研究者の関心を集め、活発な議論が展開された(黒田・伊藤・大槻・亀田,2019)。また、この発表は同学会で若手研究者賞を受賞した。 この他にも、8月には3者状況における社会情報の処理過程を検証する実験を、12月には人々の多数決意思決定に対する選好を検証する実験を行った。これらの実験結果については現在データを分析している最中である。 また並行して、昨年度投稿した2本の論文について、それぞれEvolution and Human Behavior、Japanese Psychological Researchへの掲載が決定した(Kuroda & Kameda, 2019; Kuroda, Kamijo, & Kameda, in press.)。現在は、相互作用を通じた2者の知覚傾向の収束現象に関する論文を執筆している最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度までのspeed-accuracy tradeoffに関する研究だけでなく、今年度はさらに多数決に関する研究にも着手することができた。多数決について、従来の社会学習・集団意思決定研究では、人々が参加・投票することが所与とされてきた。しかし今年度の研究ではその前提をリラックスし、人がどれくらい多数決を好むのかという点に焦点を当て、投票するかしないかにトレードオフがある状況を設定した。その結果、人々が必ずしも多数決を好んでいないことや、不正確な自信を持っているせいで最適な意思決定が出来ない可能性が示唆された。 今年度は、アイトラッキング技術だけでなく、認知モデリング技術の習得も進んだ。また、2本の論文が掲載決定となるとともに、現在は、相互作用を通じた2者の知覚傾向の収束現象に関する論文も執筆中である。研究は当初の計画以上に進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アイトラッキングにより得られた視線データと認知モデルを組み合わせることで、speed-accuracy tradeoff状況における社会情報の処理プロセスを検証した。次年度では、今年度得られた3者状況のデータとの比較を行うことで、多人数状況における戦略性や互恵性の創発過程を検証する。また、今年度得られたデータ(3者状況のデータ、多数決意思決定に関するデータ)をもとに論文を執筆・投稿する。
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