2018 Fiscal Year Annual Research Report
酵素活性制御アプタマーを用いた自律型シアノバクテリア有用物質生産・回収技術の開発
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18J21514
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
上野 絹子 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アプタマー / 合成生物学 / 阻害アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、微生物を用いた物質生産において目的物質が生産されたタイミングで菌体が自律的に溶菌し、目的物質の回収を容易に行うことができる制御系の開発を目指している。具体的には、RNAポリメラーゼの活性を制御可能なRNA配列である酵素活性制御アプタマーを開発し、薬剤生産やバイオ燃料関連化合物の生産へ応用が試みられているシアノバクテリアに対して導入することで効率的な物質生産技術の開発を試みる。 平成30年度では、最初に酵素活性制御アプタマーの開発を行うため、既報のRNAポリメラーゼ阻害アプタマーの評価および配列設計を行った。はじめに既報のT7 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーとSP6 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーのそれぞれをRNA合成し、RNA合成および阻害活性評価における実験系を確立させた。次に、2つのRNAポリメラーゼ阻害アプタマーのうち特異性が高かったSP6 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーと、テオフィリンアプタマーを組み合わせた配列を設計し、その阻害能を評価した。その結果、設計した7種類の配列のうち3種類の配列が阻害能を示した。そこで各配列と、RNA合成の鋳型となるDNA配列を用いてRNA合成を行う際にテオフィリンを添加し、テオフィリンがアプタマーのRNAポリメラーゼ阻害能に与える影響を評価した。その結果、設計した配列のうち2種類の配列を用いた場合、テオフィリンを加えた際にはRNA合成量の増加が確認された。これより、テオフィリンの有無によりRNAポリメラーゼの活性を制御できた可能性が示され、酵素活性制御アプタマーの候補配列を獲得できたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果としては次の3点があげられる。最初にRNAアプタマーを合成しその阻害能を評価する実験系を確立できたことが挙げられる。また、その評価系をもとに、阻害における特異性の高いアプタマー配列の選定を行えたことが挙げられる。当初の予定ではT7 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーとSP6 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーの両方を用いることができると想定しており、特に転写能が高く様々な酵素の発現系に利用されているT7 RNAポリメラーゼを阻害できるアプタマーを本研究に応用できればその後の幅広い応用が期待できた。しかし実際に実験を行なったところ、T7 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーは他のSP6 RNAポリメラーゼに対しても阻害能を示したために以降の実験での使用をやめ、SP6 RNAポリメラーゼ阻害アプタマーのみに研究対象を絞った。 また最後の成果として、テオフィリンアプタマーと組み合わせた阻害アプタマーにおける阻害能が確認されたことが実績としてあげられる。酵素活性制御アプタマーの設計にあたり、この配列設計部分が非常に重要であるため、低分子化合物の有無によって酵素活性制御能が変化する酵素活性制御アプタマーの候補配列を獲得できたことは大きな進歩であると考えられる。 以上の3点の成果より、本研究は現段階において概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の実験の推進方策としては以下の3点を軸に進めていく予定である。最初に、平成30年度で獲得された酵素活性制御アプタマーの再現性の確認および詳細な評価を進める。酵素活性制御アプタマー配列が期待通りSP6 RNAポリメラーゼの活性を制御できていると確認できた場合、そのアプタマーと酵素の結合の強さや、結合部位の同定を行うことで阻害機構に関する詳細な評価を行う予定である。次に、大腸菌およびシアノバクテリアにおけるSP6 RNAポリメラーゼの発現および機能評価を行う。これまでに大腸菌においてSP6 RNAポリメラーゼが機能している報告はすでになされているが、シアノバクテリアにおける報告はいまだなされていないため、それらに関して評価を進める。最後に、設計した酵素活性制御アプタマーとSP6 RNAポリメラーゼを菌体内で生産させ、アプタマーがテオフィリン等の低分子化合物に応答して酵素活性を制御可能かどうかに関して評価を行う。以上の3点について評価を進めることで、酵素活性制御アプタマーを介した新規遺伝子発現制御技術の構築を試みる。
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Research Products
(6 results)