2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J21561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥出 絃太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | トンボ / アオモンイトトンボ / 変態 / RNAseq / RNAi / 幼若ホルモン / エクダイソン |
Outline of Annual Research Achievements |
トンボは変態を行う最も祖先的な昆虫のひとつであり、昆虫の繁栄の鍵と言われる「変態」の進化的起源を考察する上で重要である。また蛹を経ること無く、水中の幼虫「ヤゴ」から陸上の成虫へと劇的に変態する点で、発生学的・生理学的にも大変興味深いと考えられている。しかしこれまでにトンボの脱皮・変態・成熟に関する分子レベルの研究はほとんど行われてこなかった。本研究では、申請者の確立したアオモンイトトンボの研究室内での飼育系を用いて、①トンボの脱皮・変態・成熟に対する昆虫ホルモン(幼若ホルモンとエクジステロイド)の役割、②トンボの脱皮・成熟・変態に伴って発現変動する遺伝子の機能、の大きく2つに着目し、トンボの脱皮・変態・成熟がどのように引き起こされ、進行するのかというメカニズムを明らかにすると共に、他の昆虫や節足動物との比較により、どのように変態が獲得されたのかについての解明に挑む。 2018年度は、研究室内で飼育したアオモンイトトンボを用いて、RNAseqによるトンボの脱皮・変態・成熟に伴って発現変動する遺伝子群の同定およびそれらの機能解析に取り組んだ。幼虫と成虫とで特異的に発現している遺伝子を抽出し、それらの遺伝子のRNAiスクリーニングを行って、変態への機能の有無を確かめたところ、複数の転写因子のRNAiにおいて、幼虫の一部が成虫、または成虫の一部が幼虫になる表現型が観察された。 これらの研究成果について、内藤カンファレンスと応用動物昆虫学会にて発表を行い、両方において優秀ポスター賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画の通り、アオモンイトトンボの脱皮・変態・成熟過程における形態変化を毎日詳細に観察・撮影し、それぞれのステージ・組織ごとにRNAを抽出して次世代シーケンサーを用いたRNAseq解析を行うことができた。加えて、そのトランスクリプトーム解析により、幼虫/成虫特異的な遺伝子を複数見出し、実際にRNAiスクリーニングを行ってトンボの変態への関与も確かめることまでできたため、予定より進展したといえる。 一方で、トンボにおける幼若ホルモンやエクジソンの産生器官の探索に関しては、限られたサンプルをRNAiスクリーニングにまわしてしまった都合上、進展があまり見られなかったため、2019年度に実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、特に転写因子に着目して、より多くの遺伝子についてのRNAiスクリーニングを行い、トンボの変態に関与する遺伝子の探索を行う。 また、昆虫ホルモン合成系の遺伝子をプローブとしたIn situ hybridization法を行い、トンボにおける幼若ホルモンとエクジソンの産生器官を探索する。探索できた場合は、トンボのホルモン産生器官を摘出・培養しLC-MSを用いてトンボにおける昆虫ホルモンの種類を同定する。 これらの結果については、いくつかの国際学会/国内学会において発表すると共に、トンボの変態を制御する分子機構についての論文執筆を進める。
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