2018 Fiscal Year Annual Research Report
ワクチン予防可能疾患の集団免疫度に関する評価体系の構築
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18J21587
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木下 諒 北海道大学, 医学研究院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症関連死 / 流行動態 / ワクチン予防可能疾患 / 数理モデル / 統計モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ワクチン接種率が向上した日本おいて、ワクチン予防可能疾患の潜在的な感染リスクグループを特定し、集団免疫度を評価することを主たる目標としている。今年度は(1)日本における感染性関連死の長期時系列トレンド解析と(2)日本における麻疹流行動態のメカニズムの解明について取り組んだ。 (1)日本における感染性関連死の長期時系列トレンド解析 近年の日本では、衛生環境の改善や予防接種の普及などによって感染症を原因とした小児死亡が減少したが、高齢人口が増大したことにより、特に60歳以上高齢者の感染症関連死が増加傾向にあり、特に肺炎、敗血症、ウイルス性肝炎、腸管感染症、インフルエンザなどの死因が増加していることを特定した。また、感染症を起因とした子宮癌や肝臓癌も増加傾向にあることを明らかにした。本研究は人口動態統計において国際疾病分類(ICD)に基づいた死因データを収集し、長期傾向をジョインポイント回帰分析を用いて解析した。 (2)日本における麻疹流行動態のメカニズムの解明 麻疹は空気感染することから感染力が強く、ワクチンの集団接種以前においては、生まれたら必ず感染する感染症であると考えられている。感染者には強い免疫を残すため、流行規模は出生率(新規感受性者の数)によって変わることが知られている。日本における麻疹の長期時系列流行データを用い、出生率とワクチン接種率、季節性、を加味した数理モデルを構築すると、周期的な流行を繰り返す麻疹流行動態のメカニズムが説明可能であることを明らかにした。急激な人口転換(多産多死→少産少死)とワクチンの集団接種による麻疹流行動態の移り変わりを捉えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り(1)日本における感染性関連死の長期時系列トレンド解析と(2)日本における麻疹流行動態のメカニズムの解明に関する研究を行った。これらの解析は終了しており、研究成果はそれぞれ国際学会での発表計画があり、国際誌へ投稿のために執筆中である。このように、初年度は当初の計画通りに遂行しており、引き続き計画の再検討も考慮しながら、次年度の研究計画を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、主に日本における風疹と麻疹の感受性集団を詳密に特定し、費用対効果を考慮した効率的な追加ワクチン接種の実施の判断材料となる、公衆衛生上の実践的意義の高い課題に取り組む。年齢、性別、空間を加味した数理モデルを構築し、予算に応じたワクチン接種の効果をいくつかのケーススタディによって明らかにし、最適なワクチン接種政策を提案する。
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