2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J21600
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 歩 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 浮遊性有孔虫 / 古水温復元 / 安定同位体比 / ベンガル湾 / セディメントトラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)大型底生有孔虫の飼育実験による、海水のMg/Caが殻のMg/Caに及ぼす影響の評価 海水のMg/Caは海水温と同様に有孔虫の炭酸カルシウム殻のMg/Caに大きな影響を及ぼすことが知られており、海水と有孔虫殻のMg/Caとの関係を知ることで、古水温の間接指標である有孔虫の殻のMg/Caからより精度よく古水温を復元することが期待されている。本年度は、Mg/Caを段階的に調整した人工海水で11群の無性生殖個体を飼育(水温25℃)し、海水のMg/Caが殻のMg/Caに及ぼす影響を評価する、予察的な飼育実験を行った。 (2)セディメントトラップ試料中の浮遊性有孔虫による水温・塩分の鉛直分布の復元 2018年7月にハンブルク大学を訪問し、1989年から1997年までにベンガル湾西部で採取された、セディメントトラップ試料(計78試料)を入手した。同海域の水温・塩分を導出するため、浮遊性有孔虫殻の安定同位体比を測定する前に、各試料の浮遊性有孔虫の群集構成を把握する必要がある。2018年8月から現在までに、78試料のうち65試料の浮遊性有孔虫の拾い出しが完了し、そのうち浮遊性有孔虫の同定は26試料、加えて個体数のカウントは26試料中14試料完了している。 浮遊性有孔虫群集の内訳が確定した14試料は1990年春季から夏季、および1996年夏季から1997年春季に採取された試料である。浮遊性有孔虫は夏季あるいは冬季モンスーンの時期に個体数が増加し、個体数および群集内の種構成はモンスーンに連動した季節変動を示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ベンガル湾セディメントトラップ試料の個数が予想以上に膨大だったため、本年度に予定していた、野外採取した、大型底生有孔虫個体の化学分析は2019年度に行うこととした。代替として、並行して進められる、大型底生有孔虫の飼育実験による、海水のMg/Caが殻のMg/Caに及ぼす影響の評価の予察的な研究を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
大型底生有孔虫の野外採取個体の殻の化学組成 2019年4月に沖縄県国頭郡本部町備瀬海岸で、計9種の大型底生有孔虫を各複数個体採取した。飼育個体の殻の化学組成に関する知見は、先行研究によって既に得られている。採取した試料を用い、大型底生有孔虫の野外採取個体の殻の微量元素濃度の測定を、産業技術総合研究所にて進めている。 また、ベンガル湾セディメントトラップ試料に関して、2019年7月までに基本情報となる浮遊性有孔虫の群集解析が完了する予定である。その後、複数の主要な種を用いて、化学分析を行う予定である。
|