2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18J21600
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 歩 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 有孔虫 / 古水温復元 / 安定同位体比 / 古環境代替指標 / セディメントトラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 大型底生有孔虫の野外採取個体の殻の化学組成 温度等のコントロール下で飼育して得た、殻の化学組成(Mg/Ca)を利用した代替指標は、実際に適用する際、野外採取個体と飼育個体の殻のMg/Caが一致する必要がある。これを確かめるため、4/5月、10月、1月に採取した計11種の大型底生有孔虫の殻の微量元素濃度を測定した。結果、野外採取個体のMg/Caは飼育個体のMg/Caがとりうる範囲内に収まり、飼育個体から得られた代替指標が野外採取個体に適用できることが確認された。先行研究で報告済みのMg/Ca―温度換算式を適用した結果、推定水温は4/5月から順に、平均22℃、28℃、25℃となった。これらの復元温度と各々の採取地点と採取時期の平均水温との関係から、大型底生有孔虫の殻には、採取前の成熟期間に経験した水温が強く反映され、記録水温に偏りが生じることが示唆された。 (2)セディメントトラップ試料中の浮遊性有孔虫による水温・塩分の鉛直分布の復元 1989年から1996年までにベンガル湾西部で採取されたセディメントトラップ試料を用い、①浮遊性有孔虫の群集構成の季節性と年ごとの動向の把握②水温・塩分を導出するため、浮遊性有孔虫殻の酸素・炭素同位体比の測定を行った。①に関し、1年を通じ試料が存在する3年分、39試料を使用し浮遊性有孔虫の季節変動を追った。結果、浮遊性有孔虫は夏季・冬季モンスーンの時期に個体数が増加し、春季に減少するといった大まかな季節性を示すが、中規模渦やサイクロンのような局地的な環境要因により、年ごとに変動パターンが異なることが明らかになった。②に関し、棲息深度、出現パターンの異なる4種を対象とし、現在までに約2年分、56試料の測定が完了している。測定結果は①で得られた浮遊性有孔虫群集の季節性と整合的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)先行研究で報告済みのMg/Ca―温度換算式を、初めて野外採取個体に適用し復元水温を検討することができた。また、複数個体を用いた試料を複数個用意し、測定した結果、試料間のMg/Caの差異、種間差は小さく、飼育実験の結果と整合的であることが確認できた。 (2)ベンガル湾のセディメントトラップ試料に関し、浮遊性有孔虫群集の年ごとの変動について現在論文を執筆中であり近く国際誌に投稿予定である。また、4種の浮遊性有孔虫を対象とした酸素・炭素同位体比測定は、56試料の測定が完了し、浮遊性有孔虫群集の季節性と整合的な結果が得られている。測定する個体の選別基準や、測定前クリーニング法を十分に検討したため、今後測定はよりスムーズになると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ベンガル湾のセディメントトラップ試料に関し、4種の浮遊性有孔虫の酸素・炭素同位体比測定を進めていく。特に、浮遊性有孔虫の群集解析の対象とした3年分については、酸素・炭素同位体比測定は約1年分のみ終えている状態のため、残る約2年分についても測定を行う。 (2)大型底生有孔虫の飼育実験から得られた代替指標を、実際の地質試料に適用する。使用するコア試料から、拾い出された大型底生有孔虫から分析対象を選定し、微量元素測定を行う。
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Research Products
(3 results)