2019 Fiscal Year Annual Research Report
結合タンパク質の網羅的な解析を指向したタンパク質ラベル化法の開発
Project/Area Number |
18J21621
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
對馬 理彦 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | タンパク質ラベル化 / Ru光触媒 / 有機光触媒 / タンパク質-タンパク質相互作用 / 分子標的同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、リガンド結合タンパク質の網羅的な解析を行うために、アフィニティービーズ上でラベル化したタンパク質を同定するための実験系を確立した。さらにビーズ上に結合したタンパク質を効率よくラベル化するためのラベル化剤として1-methyl-4-arylurazoleの構造を見出した。本年度は(1)より効率的な光触媒の探索 を行った。その中で、細胞膜透過性に優れる有機光触媒を見出すことに成功した。そこで当初の実験計画にはないものの、(2)細胞内での標的タンパク質・タンパク質-タンパク質相互作用パートナーのラベル化 にも取り組んだ。 (1)種々の有機光触媒および炭酸脱水酵素(CA)のリガンドをビーズへと固定化した。本ビーズを用い、細胞破砕液中のCAを選択的かつ効率的にラベル化できるか評価した。Ru/dcbpy錯体には効率は劣るものの、アクリフラビン、BODIPY、クマリン、N-NBDなど蛍光プローブとして汎用される種々の分子がラベル化触媒となることを見出した。Ru光触媒は電荷をもち、脂溶性に乏しいため細胞膜を透過しにくい。一方で、上記の有機光触媒は十分な細胞膜透過性を有する。このことから、今までの手法では細胞破砕液を用いた評価に応用が限られるが、新たな有機光触媒を見出したことで、細胞内での光ラベル化反応による標的同定を実現可能とした。 (2)モデル系として、HEK293FT細胞中にHalotag-H2Bを遺伝子工学的に強制発現させた。このHalotag-H2Bに対して(1)で見出されてきた有機光触媒を共有結合で連結し、可視光照射条件下、ヒストンのラベル化を試みた。平面性かつカチオン性を有するアクリフラビンを用いることで細胞内でも標的をラベル化できた。さらに触媒を連結したH2Bのみならず、相互作用タンパク質であるH2AやH3、H4がラベル化されたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者は当初の計画通り、光触媒担持アフィニティービーズ上で効率良く標的をラベル化可能な触媒を合成し、スクリーニングを行った。そのスクリーニングの中で、AcriflavinやBODIPY、NBD、クマリンといった蛍光プローブがタンパク質ラベル化触媒となることを見出した。これらの蛍光プローブは細胞内イメージングでも汎用される。すなわち、これらの分子を光触媒として用いれば細胞内でのタンパク質ラベル化も可能となると考え、申請者は生細胞内での標的タンパク質のラベル化に着手した。核内タンパク質であるヒストンH2Bに対してHalotagを導入し、Halotagのリガンドを有した上記の有機光触媒を結合させた。その結果カチオン性かつ平面性を有するAcriflavinを用いることで細胞内の標的をラベル化できることが明らかとなった。さらに標的タンパク質であるH2BのみならずH2AやH3, H4といったH2Bとの相互作用タンパク質をラベル化することに成功した。このことから申請者の見出した有機光触媒は細胞内で標的タンパク質のみならずタンパク質-タンパク質相互作用パートナーもラベル化し解析できる可能性が示された。以上のことから期待以上の研究の進展があったと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はAcriflavin骨格を基軸とし、平面性・カチオン性を有する光触媒を検討する。具体的にはメチレンブルーやアクリヂンオレンジ、フェノチアジンについてHalotagリガンド連結分子を作製する。作製した触媒-リガンド連結分子について、ヒストンのラベル化効率を評価する。並行して他の標的タンパク質のラベル化についても検討を進める。細胞膜上に存在するキナーゼである上皮成長因子受容体(EGFR)や細胞質に存在するFKBP12-rapamycin associate protein 1 (FRB)などの細胞内光ラベル化を検討する。ラベル化の進行は前年度までと同様にデスチオビオチンでラベル化されたタンパク質のSDS-PAGEおよびWestern-blotting法によって確認する。タンパク質の同定についてはアビジンビーズを用いたラベル化タンパク質の精製、トリプシン消化およびLC-MS/MS解析を用いて同定を行う。
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