2018 Fiscal Year Annual Research Report
地球内核条件での鉄合金の音速測定による内核の化学組成の解明
Project/Area Number |
18J21664
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
若松 達也 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 地球内核 / 高温高圧実験 / 音速測定 / 鉄合金 / 下部マントル / ダイヤモンドアンビルセル / 化学組成 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球最深部に位置する内核の化学組成の推定には、高温高圧実験で決定される鉄合金の音速データと地震波速度の観測値の比較が有効である。しかし、実際の地球内核に相当する温度圧力条件(5000-6000 K・330-364 GPa)における鉄合金の音速測定は、技術的困難さゆえ実現されていない。内核の組成の議論には、低い温度圧力下での音速データの外挿値が用いられているが、この外挿値と実際のそれとは大きく異なる可能性がある。そこで本研究では、近年注目が集まるフェムト秒パルスレーザーpump-probe法を改良し、実際の内核の温度圧力条件における鉄合金の音速測定を行うことで、内核の組成に強い制約を与えることを目的とする。 既存の光学システムを用いた地球内核温度圧力条件での鉄合金の音速測定では、取得する音響シグナルの信号対雑音比(S/N比)が悪くなることが予想される。そこで平成30年度に、既存の光学システムのアップデートを行った。これにより、シグナルのS/N比が以前よりも飛躍的に向上し、内核条件における音速測定の実現可能性が高まった。 また、地球内核の構成物質である六方最密充填(hcp)構造の鉄合金には、音速の異方性の存在が示唆されている。したがって、内核物質の音速測定では異方性を考慮した測定を行うことが望ましいと判断し、純鉄の単結晶を出発物質とした実験を行うことにした。試料の納品に時間を要したため、平成30年度中に実験を行うことができなかったが、副次的に下部マントルの主要構成鉱物bridgmaniteの音速を室温下で70 GPaまで測定した。得られた結果から少なくとも深さ~1500 kmまでの下部マントルは上部マントルと似た化学組成を持つことが示唆された。下部マントルの化学組成の制約は、内核の組成の解明にも繋がりうる。これらの成果について、3件の学会発表を行い、うち1件で優秀発表賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の成果として、①既存の光学システムのアップデート、②下部マントル主要鉱物bridgmaniteの音速測定の2点があげられる。計画にある地球内核圧力条件での鉄合金の音速測定には至らなかったが、既存の光学システムのアップデートを行ったことにより、本研究課題のゴールである内核条件での音速測定の実現に向けた大きな技術的進展があったといえる。また、副次的にbridgmaniteの音速測定を行い、下部マントルの化学組成にも制約を与えることができた。この成果は、内核の化学組成の解明にも繋がる。以上から、総合的に判断して、おおむね順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
測定の精密化を目指した光学システムのアップデートの大部分が完了したと考える。今後はさらに、高倍率集光レンズを導入し、試料サイズがより小さくなることが予想される超高圧下での測定にも対応する。一方、1500 Kを超えるような高温下での実験の際に測温に用いる分光器も組み込む。平成30年度に購入した純鉄単結晶が納品され次第、内核の異方性も考慮した音速測定を行う予定である。
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Research Products
(3 results)