2018 Fiscal Year Annual Research Report
KAGRA極低温懸架系の高性能化による低周波帯域世界最高感度の実現
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18J21707
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 智宏 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重力波 / 極低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、ヒートリンク防振機構の設計及び製作、その性能評価、KAGRAへのインストールを行った。 開発したヒートリンク防振機構は、各段4本の引っ張りバネを用いた3段振り子である。各段のバネは右巻きと左巻きを対にして配置することにより、Yaw方向の回転を抑える工夫をしている。各段のバネ定数は、低温下で共振周波数3Hzとなるように設計をした。 KAGRAにおけるヒートリンクは鏡の冷却、特に極低温での冷却において重要な役割をもつ。ヒートリンク防振機構はこのヒートリンクを防振するという役割をもつ一方で、冷却パスの延長による冷却時間増加は可能な限り抑えなければならない。そこで、ヒートリンク防振機構では柔らかいヒートリンクと、より大きな熱伝導率を持つ高純度アルミの平板を組み合わせて丁寧に熱設計を施した。 2018年7月には製作された防振機構の性能評価を加振台を用いて実施した。加振台にホワイトノイズを印加し、加振台に乗せた加速度計と測定点につけた加速度計の比を取り、変位-変位伝達関数を測定した。およそ10Hz以上では加振器の作り出す変位と、防振機構の防振性能の関係から測定をすることができなかった。10Hz以下ではほぼ推定通りの防振性能が得られた。10Hz以上の周波数帯域での性能評価は、力-変位伝達関数を用いて評価したいと考えている。 KAGRAの4つのクライオスタットへのインストールは当該年度中に完了した。今後はヒートリンク防振機構の高周波帯域の伝達関数測定を早急に終わらせ、クライオペイロードの制御および、干渉計の制御に組み込んでいく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定ではヒートリンク防振機構の開発に1年程度かかると見込んでいたが、想定外に物事が早く進んだため、当該年度中に防振機構の設計および製作、KAGRAへのインストールを実施できた。性能評価で10Hz以上の伝達関数測定が未だ終わっていないが今年度中に終わると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒートリンク防振機構は、これまでKAGRAでは具体的に考えられていなかったものであり全ての意味で新しいものである。今年度は10Hz以上のヒートリンク防振機構の伝達関数測定を終わらせる。また、KAGRAの観測運転に向けた極低温鏡懸架システムの評価と制御のための準備を終わらせる。さらにKAGRAでは地面振動による影響を干渉計制御にフィードフォワードする研究が進んでおり、地面に非常に近いヒートリンク防振機構もまたこの研究の対象となりうる。ヒートリンクの伝達関数を測定しておくことで、極低温懸架システムの制御にもフィードフォワードできる。今後は、これらの研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)