2019 Fiscal Year Annual Research Report
KAGRA極低温懸架系の高性能化による低周波帯域世界最高感度の実現
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18J21707
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 智宏 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 重力波 / 低温 |
Outline of Annual Research Achievements |
KAGRAにおいて20Kサファイア鏡を達成するためには、ヒートリンクによる伝導冷却は必須である。長大な防振装置の途中から接続するヒートリンクはそれ自身が振動導入源となってしまうため、申請者らが前年度に開発したヒートリンク防振装置を導入することでKAGRAのデザイン感度を満たす程度までにヒートリンク経由の振動を低減できることが見込まれる。 本年度は主に神岡サイトにて、ヒートリンク防振機構とヒートリンクが接続された状態での極低温鏡懸架システムの防振制御を行った。KAGRAはL字に配置された2本の3kmのアーム内に光共振器を構築しなければならず、レーザースポットのふらつきを抑えるために極低温鏡の振動を抑える必要がある。先行研究では角度ふらつき要求値として200 μrad という要求値が示されている。これを達成するために鏡懸架システムの揺れをを変位センサーでモニターし、これを小さくするようにフィードバック制御をかけることで要求値を達成した。 また、観測運転にあたり、今回実装した制御がどの程度検出器感度に雑音を導入しているかを調べるため、全ての極低温鏡懸架システムから検出器出力までの周波数応答を測定し、これとアクチュエータの出力スペクトルとの積を取ることで雑音の評価を行った。その結果、現在の感度のおよそ40-50 Hz以下はこの制御雑音が制限していることが明らかになった。これは、制御に用いているセンサーの雑音が大きいこと、また感度に影響しやすい鏡に近いステージで制御を行っていることが原因だと考えられている。高感度化に向けた研究開発を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザー干渉計型重力波検出器において鏡懸架装置のダンピング制御は大きな雑音源になりうる。KAGRAとして初のサファイア鏡のダンピング制御を実装し、それが感度に対してどの程度影響を与えているかを評価した。改善すべきところはあるものの、今後の研究の基礎となる研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、これまでやり残していたヒートリンク防振装置の高周波領域の性能評価を行う。平成30年度に東京大学地震研究所で加振器を用いた性能評価を行いおおよそ10Hz以上で性能が評価できているが、10Hz以上の高周波帯域では加振器の加振能力および加速度計の感度不足で測定できていない。本年度は、装置を真空中に入れコイルとマグネットを用いた加振システムを用いて加振することで性能を評価しようと考えている。常温真空での評価後、液体窒素を循環させ低温下での測定を行う予定である。
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Research Products
(8 results)