2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of thermoelectric performance by two-dimensional organic polymer and novel evaluation technology
Project/Area Number |
18J21726
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 信義 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 熱電変換 / 熱伝導測定 / 有機半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題である高性能有機熱電材料の開発に向け、薄膜にダメージを与えない面内熱伝導率κ||の測定技術確立を目指した。多様な形状・性質のサンプルを想定し、κ||が(i)大きい場合及び(ii)小さい場合に適用可能な測定法の検証をそれぞれ行った。 (i) 薄膜のκ||が大きい場合 空中に浮かせた金属細線をプローブとしてκ||を測定するT-type法を用いた。この手法ではヒートシンクと細線間にサンプルを架橋する必要があるが、有機薄膜は自立膜の作成が困難であるため、本研究では熱伝導率の低いポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに載せたものを測定し、差分を計算することで薄膜のみの熱伝導率を求めた。実際にこの手法を用いてカーボンナノチューブ(CNT)水平配向膜(CNTが面内の一方向へ配向した薄膜)の測定を行い、50~300 Kにおけるκ||の温度依存性を得た。これと原子グリーン関数法による計算結果との比較から、κ||はCNT間の界面による影響を受けず、単一CNT自身の熱伝導率によってのみ支配されることが分かった。これは薄膜中でCNTが高密度・高配向していることに対応しており、このことから測定手法の有効性が確認された。本結果については日本熱物性シンポジウム及び応用物理学会学術講演会にて発表を行い、また現在論文投稿準備中である。 (ii) 薄膜のκ||が小さい場合 金属細線をヒーター及びプローブとして用いる3ω法を用いた。本研究ではガラス基板上へ予め異なる幅を持った細線をパターニングし、その上に薄膜を載せることでκ||を求める。本研究ではまず薄膜を載せないガラス基板について測定を行い、この時ガラス基板の熱伝導率として文献値と同程度の値が得られたことから、実際に作成したデバイスを用いた測定が正常に行われること、またフィッティング時に用いる理論式が妥当であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、有機熱電材料として用いる有機薄膜の面内熱伝導率κ||を正確に測定する技術の確立を行った。まず、κ||または膜厚の大きいサンプルに対しては、PETフィルムなどの基板に載せて測定を行う手法を提案し、モデルサンプル(CNT配向膜)の測定からこの手法が有効であることを明らかにした。この手法では微細加工技術を用いず簡便にκ||を測定することができるため、サンプル作成とその測定というサイクルを素早く回し、効率良く材料開発を行うことが可能となった。 一方、熱電変換へ応用する上で有利となるκ||の小さい材料に対する測定手法も提案し、薄膜を載せない場合の測定値と理論値のフィッティングから、実際に作成したデバイスが使用可能であることを確認している。また、実際に有機薄膜を載せた場合についてもすでにシミュレーション結果と理論値が一致していることを確認しており、検証ののち実際の測定に移行することが可能である。 以上より本研究は本年度における目標を概ね達成しており、順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
κ||の小さい材料に対する測定手法である3ω法について、引き続き検証を行うことで手法としての確立を目指す。同時に、電気伝導性が報告されているポリマー材料、特に2次元構造を有する共有結合性有機構造体や金属有機構造体について、これらの配向膜を作成することでより高い電気伝導性を持った材料の開発を狙う。その上でポリマー構造や電荷ドープに対する材料の熱伝導率変化を調べることで、構造最適化に向けた設計指針の提示を目指す。
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