2018 Fiscal Year Annual Research Report
構造不均質がコントロールする地震破壊機構の理論的研究:XBIEM-ECSの実現
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18J21734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 将也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | prompt gravity / transient deformation / time variable gravity / 2011 Tohoku earthquake |
Outline of Annual Research Achievements |
地震の断層運動によって放射される地震波は地殻中を6~8 km/sの速さで広がる。一方、この地震波は地殻の岩石の密度変化を引き起こし、これによって地球の重力場が変化する。重力変化は地震波より速く光速 (~300,000 km/s) で空間全体に伝わるため、地震波到達前から重力は変化し始めることが期待される。この地震発生から地震波到達時までの間におこる即時重力変化は、緊急地震速報の即時性の向上という価値を持つだけでなく、重力変化の振幅から地震の規模の推定を数分以内に行なえるようになることで地震波の後に到来する津波規模の予測にも役立てられると期待されている。 即時重力変化について、2011年東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震)からの信号を検出したとする報告がこれまでに数例なされてきた。しかし、背景ノイズに対する信号の統計的有意性の低さや、使用した観測点数の少なさなどの問題点があり、即時重力変化が存在するかどうかについて未だに議論が続いていた。 そこで本年度我々は、即時重力変化の存在を示す確定的な検出を目指して、詳細なデータ解析を行なった。東北沖地震の際の利用可能なデータ(即時重力変化を記録しうると考えられる、超伝導重力計2点、防災科研F-net広帯域地震計71点、Hi-net傾斜計706点)を網羅的に調査し、地震波到達前の信号の有無を調べた。その結果、F-net広帯域地震計記録のスタック波形において地震波到達前に大きな振幅のトレンドが観測され、この信号の背景ノイズに対する統計的有意性は7シグマであった。 本研究によって得られたスタック波形は、即時重力変化が存在することを7シグマという非常に高い信頼性で示す初めての証拠である。現在複数のグループによって即時重力変化のモデリング研究が行なわれているが、我々のスタック波形はこれらのモデル波形が合わせにいくべき基準を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震による即時重力変化について、検出報告はこれまで数例なされてきた。しかし、背景ノイズに対する信号の統計的有意性の低さや使用した観測点数の少なさなどの問題点から、即時重力変化が存在するかどうかについて未だに議論が続いていた。本年度我々は、即時重力変化の存在を示す確定的な検出を目指して詳細なデータ解析を行ない、その結果、F-net広帯域地震計スタック波形において背景ノイズに対して7シグマという非常に高い統計的有意性で即時重力変化が存在することを示した。このように、データ解析において当初の目標を果たすことができた。 現在複数のグループによって即時重力変化のモデリング研究が行なわれているが、我々のスタック波形はこれらのモデル波形が合わせにいくべき基準を与える。我々が得たような重力計や地震計での観測結果を十分に説明するモデルが構築され、重力変化の値が拘束されれば、関連する物理量である重力勾配や空間歪の値も同様に拘束され、これらによる地震即時信号の観測を目指す将来の計測機器開発(例えば、Torsion Bar Antennas, Dual Torsion Beam Gravimeter)における目標を与えることができる。 以上の結果は、英文学術雑誌上で発表するとともに、東京大学の広報 (UTokyo Focus) で英文プレスリリースを行なった。 その他、上記の地震による即時重力変化についての研究の過程で得られた、全無限媒質中でのモーメントテンソル震源やシングルフォース震源が引き起こす様々な物理量(変位勾配、歪、応力、密度変化)の解析解を公式集として地震学会誌上で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
全無限媒質中では地震による即時重力変化とその重力変化が生み出す媒質の変位加速度が地震波到達まで完全に一致し、重力計や地震計は即時重力変化に対する感度を完全に失うということがこれまでの理論研究から知られていた。即時重力変化は空間的に不均質でありそれによる運動も空間的に不均質であるにもかかわらず、変形による弾性復元力が働かず媒質が重力変化に従って自由落下するという一見奇妙なこの現象について、我々は質点の出現という最も単純な状況から出発して媒質の変位や加速度、応力などの解析解を導き、この変形が地震に限らず一般の密度変化の発生においても発生することを示した。この結果について、次年度に英文誌で発表予定である。 また、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震 (Mw 9.0) の際のレーザー歪計 (神岡CLIO) の記録を調べ、即時重力変化が地球の歪として記録されているか解析する。周辺の気圧計を用いて大気起源のノイズを低減することで、地震起源の信号の抽出を目指す。これまでの即時重力変化の検出報告は重力加速度やそれによる地面加速度の形で超伝導重力計や広帯域地震計によって記録されたもののみで、もしレーザー歪計記録中に信号が見つかれば、重力勾配あるいは歪としての初めての観測となる。 その他、近年開発された自由振動論に基づく即時重力変化モデルに基づき、重力変化や歪の観測値から震源の諸元(震源位置、メカニズム、震源時間関数等)を計算する方法について検討を行う。
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Research Products
(5 results)