2018 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける完新世の環境変動の高時間解像度解析と中国文明盛衰の関係
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18J21788
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 展人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 完新世 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国の東シナ海大陸棚に存在する陸源砕屑物堆積帯(Inner shelf mud belt)から採取された堆積物コア(MD06-3040)のアルケノン古水温分析(Uk37’)を行い、完新世の表層水温(SST)変動を高時間解像度で明らかにした。コア採取地は沿岸の浅海であるため、SSTは気温(AT)と良い相関がある。よって、Uk37’-SSTの復元記録から揚子江デルタのATを定量的に推定することができた。Uk37’-SSTのデータに基づくと、Little Ice Age (約0.1-0.3 cal. kyr BPの寒冷期)など全球的な気候変動と整合的な温度変化が復元されたことから、この指標の信頼性は高いと言える。約4.4-3.8 cal. kyr BPには、複数回かつ急激な寒冷化 (3-4℃の水温低下、3-5℃の気温低下に相当) が発生していたことが示された。この寒冷化は4.2 kaイベントに呼応し、顕著な全地球規模の気候変動と関連するものと考えられる。この時期に、東アジア及び北西太平洋では、偏西風ジェットの北限位置の南下、エルニーニョの発生頻度の増加、黒潮の変調 (Pulleniatina Minimum Event) などの大きな環境変動が先行研究より示唆されている。これらの要素が相互に関係し、急激な寒冷化およびアジアモンスーンの変調がもたらされた可能性が高い。 同時期は、揚子江デルタで栄えていた世界最古の水稲栽培を基盤とした長江文明が一時的に中断した期間と重なる。本研究が明らかにした急激で大きな寒冷化イベントは、稲作にダメージを与え、揚子江デルタの社会や文明を崩壊させる一因となったかもしれない。 本研究のデータと考察の一部をオランダの国際誌Quaternary Science Reviews誌に投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私の特別研究員採用1年目の研究の進展はおおむね順調であった。中国揚子江河口部付近の浅海から採取された海洋堆積物コアの分析を終了し、当地の完新世の温度変動を高時間解像度で定量的に復元することに成功した。このデータを用いて、本研究の目的の一つである気候変動と人類社会の変遷に関して考察を行うことができた。この成果はQuaternary Science Reviews誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中国人研究者と共同して、中国の気候変動についてさらに詳しく明らかにするとともに、日本内湾から採取された堆積物コアを持いて日本の気候変動についても研究を行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Frequent and abrupt cold episodes around 4.2 ka in the Yangtze delta: collapse of the earliest rice cultivating civilization2018
Author(s)
Kajita, H., Kawahata, H., Wang, K., Zheng, H., Yang, S., Ohkouchi, N., Utsunomiya, M., Zhou, B., Zheng, B
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Journal Title
Quaternary Science Reviews
Volume: 201
Pages: 418-428
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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