2019 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける完新世の環境変動の高時間解像度解析と中国文明盛衰の関係
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18J21788
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 展人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 古気候 / アルケノン / 中国 / 日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用2年目では,東アジア沿岸域の気候変動について,広域的に明らかにすることを目指した。そこで,中国文明からの移民流入があった日本において,完新世後期の気候変動を明らかにすることを目指し,東京湾から採取された海洋堆積物コアの解析を行った。堆積物に含まれる有機物を分析することで,過去4400年間の表層海水温変動を精密に分析した。研究の結果,過去4400年の間に,主に太陽活動や火山噴火活動の強弱に起因する顕著な9つの温度ピークが同定された。特に,①世界的な文明崩壊/劣化に対応する4.2ka気候イベント(注1),②縄文/弥生時代の境界期,③弥生末期の内乱(倭国大乱)が発生した時期,④平安末期の武家の台頭期,に大きな寒冷化が認められた。この研究は,Quaternary Science Reviews誌に掲載された。 また,気候変動と文明盛衰の関係を論ずる本研究課題にとって,人間が生活する陸域の気候をより正確に反映する古気候記録を取得することが重要である。これまでの研究では,沿岸域や内湾の海洋堆積物を用いてきたが,人類生活の場と隣接する湖の堆積物は,より正確な陸域の気候変動を記録している可能性が高い。しかし,湖底堆積物から定量的な水温変動を復元する手法はまだ確立されていないことが問題であった。そこで,中国や日本において,新石器文明の発生と伝播過程で重要な役割を果たした地域に存在する湖沼を調査し、古水温指標となるアルケノンを探索した。その結果,青森県の鷹架沼にアルケノン生産種が棲息することを発見した。堆積物に含まれるアルケノンの組成解析と環境DNA解析を行った結果,この沼でアルケノンを用いた定量的な古水温復元が可能であることを示すことに成功した。この研究は,Organic Geochemistryに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別研究員DC採用2年目の研究の進展はおおむね順調であった。長江河口域の堆積物柱状コアの成果は、Quaternary Science Reviews誌に掲載された。2019年には,東京湾から採取された海洋堆積物コアの解析を行い,過去4400年間の表層海水温変動を精密に分析した。研究の結果,過去400年の間に主に太陽活動や火山噴火活動の強弱に起因する顕者な9つの温度ピークが同定された。特に,大きな寒冷化は,世界的な文明崩壊/劣化や日本の社会の大枠が劇的に変化していたことに対応することが明らかとなった。この研究成果もQuaternary Science Reviews誌に掲載された。 これらの研究により、東アジアの完新世の気候変動について、広域的に明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究者より、中国沿岸域大陸棚から採取された完新世の海洋堆積物を譲渡していただいた。本年度は、このコアの解析を行うことで、中国沿岸域における気候変動についてさらに詳しく解明することを目指す。 さらに、本研究課題のまとめとして、沿岸堆積物より正確に陸上の古気候復元を行うことができる湖堆積物コアに対して適用できる古水温計の開発を行う予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Chemical weathering and CO2 consumption in the Himalayan river basins -Mekong river sea to summit-2019
Author(s)
Kajita H., Ota Y., Yoshimura T., Araoka D., Manaka T., Ouyang Z., Iwasaki S., Yanase T., Inamura A., Uchida E., Zheng H., Yang Q., Wang K., Suzuki A., Kawahata H.
Organizer
The Univ. of Tokyo - Tongji Univ. Joint Workshop on Geoscience
Int'l Joint Research
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