2019 Fiscal Year Annual Research Report
微小光共振器による可視光マイクロコム発生に関する研究
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18J21797
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤井 瞬 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 微小光共振器 / マイクロコム / 四光波混合 / 分散制御 / 超精密加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は微小光共振器とよばれるマイクロオーダーからミリオーダーサイズのリング型共振器を作製し,可視光帯におけるマイクロコムの実現と分光応用を目的としている.マイクロコムとは微小光共振器を用いて生成される,光が周波数軸上に等間隔に並んだ”光周波数コム光源”(光コム)のことを指す.光コムは非常に高い精度と安定性を生かして様々な応用が提案されている光源であり,2005年にはノーベル物理学賞の対象となった技術である.可視光帯の光周波数コム光源としてはチタンサファイア固体レーザがすでに利用されているが,微小共振器による可視光マイクロコムは,従来の可視光帯コムに置き換わるコンパクトで安価,省エネルギーな光コム光源として大きな期待をされている. マイクロコムの発生原理である四光波混合は三次の非線形光学効果であり,その発生には非常に高いQ値(光の閉じ込め性能)が必要となる.しかし可視光帯は散乱の影響が大きく,通信波長帯よりもQ値が低下しやすいという問題がある. また,マイクロコムの発生には高いQ値と同時に異常分散とよばれる条件を満たす必要がある.この点に関しても可視光は材料の正常分散の影響が大きいために,共振器構造の精密な制御が必要である. 本研究では高Q値化と構造制御による共振器分散の精密設計を両立することで,可視光という従来難しいとされる波長帯域でのマイクロコム発生を狙っている.本年度は超精密加工技術による共振器作製を通して,高Q値かつ分散制御されたフッ化物結晶共振器の作製に取り組み,大きな成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は超精密加工を用いた微小光共振器作製に関する切削条件の解明およびマイクロコムの重要なパラメータである共振器分散の詳細な解明が主たる成果である.光パラメトリック発振を介したマイクロコムの発生には一般的に異常分散が必要とされるが,特に材料分散が正常分散を示す場合には共振器構造設計による構造分散制御技術が大きな役割を果たす. 分散設計は導波路共振器とよばれる共振器では比較的容易である一方で,シリカガラスやフッ化物をはじめとする材料で作製されるウィスパリングギャラリーモード共振器においては作製手法の問題で分散設計が難しいとされる.そこで機械加工分野での最先端手法であるコンピュータ制御による超精密加工を用いることで構造分散制御を行うこととした. 切削加工で共振器作製を行うにあたって,重要なパラメータが「臨界切り込み深さ」である.臨界切り込み深さとはなめらかな表面加工が可能な延性モード加工から表面が悪化する脆性モード加工に移行する切り込み深さを指し,共振器に適した状態の加工表面を達成するためには常に臨界切り込み深さ以下で加工を行うことが必要である.そこで,単結晶フッ化マグネシウムに対して臨界切り込み深さを調査し,さらに回転速度をはじめとする円筒状加工における精密加工のパラメータを最適化することで,Q値10の8乗を超える超高Q値を切削加工のみで達成した.このとき,同時に構造分散制御を実現しており,通信波長帯ではあるが従来研究では報告されてこなかった1オクターブ以上離れた光パラメトリック発振の観測に世界で初めて成功した. また,作製した共振器の分散の計算方法,測定方法に関する様々な手法を比較検討することで,マイクロコム発生における共振器分散の役割を明確にしたレビュー論文を発表し,今後の進展への足がかりを得た. その一方で可視光帯での実験の進捗が少なく,さらなる取組みが必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度の実施計画として挙げていた,超精密加工技術を用いた構造分散制御と高Q値を両立した微小光共振器の作製と光パラメトリック発振の実証に関しては「通信波長帯」においては大きな進捗が得られた.また,作製と同時に進めるべき課題としたマイクロコムのモード同期化(パルス化)へ向けた手法の開発も概ね達成したといえる. その一方で,可視光帯に最適化した共振器の作製および実験に関しては進展しているとはいえず,今後のさらなる取組みが必要である.その理由として,高Q値を測定できる高精度な可視光帯波長可変光源は一台数百万円程度と非常に高価なために,測定光源の導入が進んでいないことが挙げられる.その代替案として,周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶による二次高調波を可視光波長可変光源として利用することを計画している.PPLN結晶の購入はすでに済んでおり,本年度はアライメント用の精密ステージやミラー等の光学部品を購入し,可視光測定系の構築を進めたい.波長変換素子を利用することで,通信波長帯で構築したフィードバックシステムや信号発生器との連携システムがそのまま使用できるので大幅な時間の短縮が期待できる. 以上をまとめると,通信波長帯で蓄積した超精密加工による微小光共振器作製技術およびモード同期マイクロコムの発生技術を,可視光波長へ応用することで可視光マイクロコム発生と分光応用の計画遂行を目指す.
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Research Products
(22 results)
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[Presentation] Saturable absorption with CNT coupled WGM and fabrication of Er-doped microresonator for on-chip mode-locked laser,2019
Author(s)
R. Imamura, S. Fujii, T. S. L. P. Suzuki, R. Suzuki, R. Ishida, M. Ito, H. Maki, L. Yang, and T. Tanabe,
Organizer
Conference on Lasers and Electro-Optics European Quantum Electronics Conference (CLEO/Europe – EQEC 2019)
Int'l Joint Research
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