2019 Fiscal Year Annual Research Report
言語類型論的アプローチに基づく南琉球八重山語西表島船浮方言の記述文法書作成
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18J21798
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
占部 由子 九州大学, 人文科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 記述文法 / 形容詞 / 言語類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,1. 記述文法作成のための談話データ書き起こし,2. 類型論的調査の実施を行った。1. 記述文法作成のための談話データ書き起こしについて,2020年度中はコロナウイルス感染症の影響によりフィールドワークを実施できなかった。そのため2020年度は,他の研究者からこれまでの収集したデータの共有を受け,会話データ (40分),モノローグデータ (2時間) の整理を行った。現在はこれらのデータを中心に記述する文法項目の見直しや,節連鎖に関する分析を進めている。さらに現在は,白保方言の昔話の音声資料の書き起こしに従事している。この資料の話し手は,現在の調査協力者の親世代にあたるため,消滅の危機に瀕する方言の研究では確認しにくい世代間の差についても観察できる可能性がある。これらの書き起こしデータは,グロスの付与まで完了しており,今後はこれらのデータを使った白保方言のコーパス構築の基盤として活用できるよう計画をしている。 2. 類型論的調査の実施については,2020年度から新たに始めた,琉球諸語の形容詞のいわゆるクアリ・サアリと重複形と呼ばれる諸形式に関して,これまでの記述研究の蓄積を参照するという調査を行った。2020年度中は主にこの作業に従事しており,その成果を基に研究会での発表を2件行った。さらには,発表した内容を発展させ,2021年5月の日本語学会において発表を行い,2021年度中に論文の投稿を行う予定である。これに加えて,前年度中に進めていた焦点標識とモダリティに関する内容を論文にまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は記述文法に関する調査に大幅な遅れが見られた。コロナウイルス感染症の影響が研究計画に大きな支障を与えており,遅れが生じている。大きな要因は,調査協力者との調査が実施できなくなったことが挙げられる。自然談話資料の書き起こしは,調査協力者に方言での発話内容の聞き取りと関連する文法事項・語彙項目の質問をしながら進める。しかし,2020年度は話者と対面やオンラインで調査が行えなかったため,自力での書き起こしを余儀なくされ,以前よりも大幅に作業時間を要する状況になっている。 一方,類型論的な研究に関して,特に琉球諸語の形容詞を対象とした調査は既存の記述文法を参照しながら行ったこと,他の研究者からデータの共有があったことにより,進展を見せた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,記述文法の執筆に大きな配分を割いて研究を進める。前年度までに行った書き起こし・データ整理を基にして執筆項目の整理を行ってきたため,今後はその内容を拡張,あるいは適宜修正を加えながら執筆を進める。類型論的な調査に関しては,これまでに行ってきた内容をまとめ,発表あるいは論文化の作業を行う。
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Research Products
(2 results)