2018 Fiscal Year Annual Research Report
次世代高速光リンクのための光波回路‐光学素子間の高効率光結合の実現
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18J21804
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
森本 祥江 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 光インターコネクション / ポリマー光導波路 / 光結合 / 波長分割多重伝送素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、今後必要とされる100~400 Gbpsレベルの高速光リンクを見据え、新規ポリマー光導波路デバイスの提案並びにマルチモード・シングルモード光ファイバ(MMF・SMF)との低損失光結合を実現し、オンボード光回路へ応用することを目的としている。平成30年度の研究では、波長分割多重(WDM)伝送用多波長信号合波デバイスの実現に向けた、分岐型マルチモードポリマー光導波路の最適構造設計及び作製を行った。 作製の際には、当研究室で独自に考案した、円形GI型コアを形成可能であるMosquito法に加え、同じくGI型屈折率分布を形成可能であるインプリント法を採用した。最終目標である4分岐の構造の前に、まずは2分岐から作製を検討した。 Mosquito法では、構造乱れのない2分岐型光導波路の作製条件を確立している一方で、同一導波路内でのチャネル間の損失差が問題であった。分岐構造の再設計や作製時温度環境の見直しを行うことで、チャネル間損失差を0.3 dB程度にまで低減することができ、低損失な円形GI型コアの分岐型光導波路の作製に成功した。 インプリント法にて作製したGI型コアの分岐型光導波路は、特有の光閉じ込め効果により、分岐部での光漏洩をSI型に比べ大きく抑えることができる一方で、入射部にて開口数の大きなVCSEL光源との結合損失の増大が懸念事項となっていた。そのため、導波路作製工程内に含まれる紫外線露光条件を見直し、最適なGI型屈折率分布の形成を試みたところ、1 dBもの損失低減を達成した。この分岐型光導波路を用いて、26 Gbpsの高速信号伝送及び2波長信号同時伝送に成功し、波長分割多重伝送用素子への応用に足る光導波路の作製に至った。 以上の検討により、 100~400 GbpsレベルのMMF-WDMリンクの構成素子としてのポリマー光導波路の有用性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的である、100~400 Gbpsレベルの高速光リンクを見据えた、新規ポリマー光導波路デバイスの提案並びにMMF・SMFとの低損失光結合の実現を目指すにあたり、マルチモード光リンク、シングルモード光リンクの双方向からの検討を計画している。 平成30年度当初の計画では、当該年度内はマルチモード光リンクに焦点を当て、波長分割多重伝送による高速化を目指し、分岐型マルチモードポリマー光導波路の最適構造設計及び作製を行う計画であった。 一方で、オフボード光配線に、MMFに代わり、伝送帯域距離積に優れたSMFの使用が望まれつつある。特に、高速な外部変調が可能となるSiフォトニクス技術の進展とともに、シングルモード光リンクへの期待は一層高まっている。そこで本研究では、Siフォトニクスチップと呼ばれるオンチップSi細線導波路と、SMFの間を高効率に接続するスポットサイズ変換器として、新たなシングルモードポリマー光導波路素子を提案することを目指している。これは、平成31年度の研究計画として位置付けていた。 平成30年度の研究では、当初計画していた分岐型マルチモードポリマー光導波路の検討と並行して、シングルモードポリマー光導波路作製に関する基礎検討に取り組むことができた。当研究室独自考案のMosquito法でのシングルモード光導波路作製条件確立に加え、従来の矩形SI型導波路作製法である直接露光法の新規導入に初めて着手し、作製環境及び作製条件の確立に成功した。これにより、新たなシングルモードポリマー光導波路素子を、矩形SI型コアと円形GI型コアの比較を取り入れながら作製・評価していく土台が整ったと言える。これは、平成31年度の研究を遂行するにあたり、大きな進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、Si細線導波路-SMF間のMFD差を縮小するためのスポットサイズ変換器の機能を備える新たなシングルモードポリマー光導波路素子を提案し、結合効率の向上を目指す。 今後の研究の推進方策としては、まず、シングルモードテーパ導波路の最適構造を、光波伝搬理論解析にて決定する。光損失を増大させることなくスポットサイズを変換するために必要な、テーパ長やコア形状、コア内屈折率分布について明らかにした後、実際に断熱結合を実現するための、Si細線導波路とSSCの接続形態について明らかにする。実験面では、Mosquito法及び直接露光法を用いて、実際にシングルモードテーパ光導波路の作製条件を詳細に検討していく。Mosquito法では、円形状のコア断面を維持しつつ、コア径を軸方向に変化させる2次元テーパ構造を形成可能であるのに対し、直接露光法では、コア高さは一定のもと、コア幅のみを1次元的に変化させるテーパ構造となるので、その影響について特に注視しながら検討を重ねる。 以上の検討を基に、Si細線導波路及びSMFと低損失光結合を実現するポリマー光導波路型SSCを作製・評価し、得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。
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Research Products
(2 results)