2018 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質の膜挿入・膜透過経路の再構成による糖脂質MPIaseの作用機構の解明
Project/Area Number |
18J21847
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
西川 華子 岩手大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 糖脂質 / TAT膜透過反応 / MPIase / スフェロプラスト / 反転膜小胞 / 膜タンパク質精製 / 細胞膜へのターゲティング |
Outline of Annual Research Achievements |
H30年度では採用前から行っていた「in vitro実験系におけるTAT膜透過の確認」の続きと、「in vitro実験系におけるTAT膜透過活性の評価」を行った。in vivo系においてMPIase枯渇下でTat基質の膜透過が阻害されることを再確認するため、同株を培養後スフェロプラスト化して分画した。MPIase存在下では膜透過して遊離したTat基質の成熟体が上清画分に回収された。一方MPIase枯渇条件下では、上清画分に成熟体は全く確認されず、前駆体が沈殿画分に回収された。この結果は、MPIase枯渇条件下ではTat基質の膜透過が進行しないことを明示している。さらにin vitro系でもMPIaseがTAT膜透過反応に関与していることを示すため、反転膜小胞を用いて膜透過活性が検出できるか調べた。MPIase枯渇株にTatABC過剰発現プラスミドを導入した株を構築し、MPIase枯渇条件下におけるTat基質の膜透過を観察した。この反転膜小胞はTatABC過剰発現条件で調製しているにもかかわらず、MPIase枯渇時には基質は膜透過しなかった。これらの結果から、MPIase非存在下では膜透過が進行しないことがin vivo/in vitro両系で明らかになり、TAT膜透過反応にはTatABCのみならずMPIaseも必須であることが証明された。 また、再構成に用いるTatA、B、CおよびTat基質SufIの精製も行った。精製の際、因子にはHisタグが付加されているが、2%SDSプレート上での生育相補実験により、Hisタグ付きの因子が機能的であることを確認している。またSufIの精製において、Tat基質の細胞膜へのターゲティングにはこれまで報告されていたTatCではなく、MPIaseが関与しているということを見出しており、MPIaseとTAT膜透過反応とのより深い関与が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目であるH30年度では「研究実施計画」に基づき「in vivo実験系におけるTAT膜透過の確認」および「in vitro実験系におけるTAT膜透過活性の評価」を中心に行った。スフェロプラストや蛍光顕微鏡、また反転膜小胞を用いた膜透過アッセイにより、in vivo/in vitro両系においてMPIaseがTAT膜透過反応に必須であることを証明することができた。さらに再構成系構築に向けた「Tat因子およびTat基質の精製」も完了し、その精製途中でMPIaseがTat基質の細胞膜へのターゲティングに関与している新たな可能性を提示することができた。「リポソーム内へのプロトン駆動力の組み込み」についても着手しているが、これに関してはまだアッセイに十分なプロトン駆動力形成の条件検討ができていない。今後は精製したF0F1-ATPaseを組み込んだリポソームを用いたプロトン駆動力形成法などを検討しており、条件検討が終わり次第、TAT膜透過反応の試験管内完全再構成系の構築を進めることが可能になる。 これらのことから、おおよそ当初の計画通り日本研究課題が進捗していると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず昨年度に引き続き、「in vitro実験系におけるTAT膜透過活性の評価」を完了させる。構築したMPIase枯渇株のINVに対しTat基質が膜透過しないことは昨年度観察できたが、MPIaseが確実に関与していることを再確認するため、TAT膜透過反応液に 抗MPIase抗体を添加し、TAT膜透過反応が阻害されるかどうか調べる。また、この時使用したINVを用い「可溶化INVを用いたTAT膜透過経路の再構成」にも着手する。INVを可溶化・再構成したプロテオリポソームを用い、TAT膜透過活性を調べる。TAT膜透過活性が検出された場合、活性がTatABC・MPIase依存であることを確かめる。 「プロテオリポソーム内へのプロトン駆動力の組み込み」についてもH30年度から引き続き行う。膜電位の測定は膜電位感受性色素による蛍光強度の変化により観察できる。しかし色素の蛍光が膜電位非存在下でも変化してしまうため、膜電位が形成できているのかどうかをH30年度では判断できなかった。今後は、膜電位依存で膜挿入する膜タンパク質を用いた膜電位形成確認法を検討していく。膜電位形成の条件検討が終わり次第、昨年度に精製が完了しているTatABC やMPIaseを再構成したプロテオリポソームに膜電位を形成させ、TAT膜透過の完全再構成の確立を目指す。完全再構成系が完成した場合はその再構成系を用い、これまで報告されている変異体の中でも特徴的なTatABC変異体やMPIase誘導体を使用した「TAT膜透過の分子機構の解明」を実施する。ここで使用するアセチル基を増加させたMPIaseや脂質部分を化学修飾したMPIaseは共同研究を行っているサントリー生命科学財団で調製する。
|