2019 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative Reconstruction of Electrical Properties and Proton Density of Human Body Using MRI
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18J21876
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伏見 幹史 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 電気特性 / 磁気特性 / MRI / 同時再構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,がん部位の診断や生体加熱の評価に有用な,人体組織の電気特性(導電率・誘電率)分布をMRI画像から再構成するものである.2019年度は、若手研究者海外挑戦プログラムに採用されていたため、2019年4月1日から2020年3月31日までの全期間、米国コーネル大学に所属し研究活動を行った。コーネル大学では特別研究員としての研究課題である電気特性再構成を、所属先で取り組まれている磁気特性再構成を統合することを目的に研究を行った。 生体組織の電気特性・磁気特性はいずれも病変部位で健常な組織と異なる値をとることが知られており,これら物性値の定量画像を得ることで,通常のMRI形態画像では判断が困難な病変の診断が可能となる。電気特性(導電率)はがんや虚血性疾患の診断に有効である一方,磁気特性(磁化率)は神経変性疾患等の診断に有効であり,それぞれ異なるターゲットを持つ。これら二つの画像化問題は通常個別の技術として研究されているが,単一の撮像から両特性の画像化が同時に可能となれば,撮像時間の短縮や位置合わせが不要となるといった点で実用上の利点がある。 磁化率再構成で通常用いられるMRIのシーケンスとして,マルチエコーグラディエントエコーがあるが,一方で導電率再構成では,磁化率の影響の混入をさけるためスピンエコーが用いられることが多い。本研究では電磁気特性の同時再構成のため,通常は磁化率の影響があるために避けられるグラディエントエコーを利用し,撮像画像から両者の影響を分離推定する枠組みについて,そのアルゴリズムの改良手法を提案し,単一撮像からの電磁気特性の再構成を実現した。さらに分離されたデータから電気特性を再構成するアルゴリズムについて,精度向上のためのアルゴリズムを提案した。磁化率再構成の部分については派遣先研究室で用いられている手法を適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気特性の再構成に関しては,前年度の成果を論文誌に現在投稿中である。 本年度取り組んだ電磁気特性の同時再構成に関しては,提案手法に関して2019年9月に国際会議でポスター発表済みであり,また別の国際会議の口頭発表として採択済みであり,2020年8月に発表予定である。さらに同内容に一部結果を加えたものについて,論文誌への投稿のため現在執筆を進めている。 健常者および脳腫瘍患者の脳MRI撮像データを取得し,提案手法を適用することで導電率と磁化率の画像化を行ったが,健常者のデータから正しく組織ごとのコントラストが得られることが確認され,また脳腫瘍患者のデータから腫瘍部位の検出が可能であることが確認された。特に脳腫瘍患者の推定結果では,導電率画像と磁化率画像で異なるコントラストが得られたため,両者が異なる情報を与えていることが示唆された。以上の成果は実際の被験者を対象としたものであるが,このようなデータ計測は特別研究員としての所属先では困難で,派遣先研究機関の環境で初めて可能となったものであり,本研究を進めるうえで大きな進捗を生んだと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の派遣先では,元々博士課程の研究課題として進めていた電気特性再構成と,派遣先研究室で行われている磁気特性再構成の統合を第一の目的として行ったため,電気特性再構成自体のアルゴリズムに関しては筆者が提案する最新の手法ではなく,すでに普及している簡易版の手法を用いた。個々の電気特性・磁気特性画像の精度はそれぞれの再構成手法の能力よって決まるものであるから,電気特性再構成の手法を改良することで本研究の結果も向上が見込める。今後はこの点を第一の目的として研究を進める方針である。 また派遣の目的の一つとしてMRI実計測データの収集,および計測技術の習得があった。筆者の研究室では数値シミュレーションを主として研究を行ってきたが,派遣先は磁気特性再構成を含めMRI全般に広い見識・経験を持つ研究室である。今回の派遣期間中には実際のMRI装置を用いて多数のデータを取得したり,あるいはMRI装置の内部パラメータを設計して計測方法自体を調節したりするような実験を行ったので,今後は得られた知見をもとに,技術を特別研究員としての所属先機関で同様の計測を実現させる方針である。
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