2019 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟な境界条件を組み入れたスパースモデリング手法の開発
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18J21951
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片上 舜 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 交換モンテカルロ法 / ベイズ推論 / パラメータ推定 / 分布推定 / ベイズ自由エネルギー / スパースモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,柔軟な境界条件を組み入れたスパースモデリング手法の開発を目指すものであった.そこで,獲得された境界条件を持たないスペクトルデータの基底表現解析に対するスパースモデリング手法について現在研究を行っている. 令和元年度においては,固体物理や物性科学の分野での分散関係スペクトルデータに対して生成過程と観測過程の2つのモデルを導入し,ベイズ推論を用いることでデータを再現する物理モデルパラメータを分布推定する手法を提案した.その結果,従来の手法に存在したヒューリスティックな過程を取り除くことができ,物理パラメータの推定精度についての議論可能とした.また,推定精度を用いることで,従来不十分と考えられていた統計精度からも物理量の推定が可能であることを示した.また,ベイズ推論において事後分布を推定するにはベイズ自由エネルギーの計算が必要となるが一般的には解析的に計算することは不可能であり,計算コストが大きい数値計算により近似的に求められる.そこでベイズ推定の計算コストを低減するため,ベイズ最適化およびガウス過程の手法を用いて,少数の分布サンプリングから近似的にベイズ事後確率分布およびその最大値を推定する手法を提案した.本研究では事後分布を少数のサンプルからガウス過程によって補間した.またベイズ最適化を用いて分布の最大値を少数のサンプルから推定した.提案手法はマルコフ確率場モデルのハイパーパラメータ推定を対象に有効性を検証した.その結果,少数サンプリングで疎視化された事後分布から16倍以上の高解像度化に成功し,少数サンプリングのみから事後分布を近似的に計算可能であることを示した.また,確率的な探索と比較して,ベイズ最適化を用いることで事後分布の最適値を高速に求めることが可能であることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は,柔軟な境界条件を組み入れたスパースモデリング手法の開発を目指すものであった.令和元年度における研究実績の概要に示したように,境界条件を持たないスペクトルデータの基底表現解析に取り組み,分布関数基底モデルが有効に機能することを確認し,スペクトルデータに対して生成過程と観測過程の2つのモデルを導入した.これにより,ベイズ推論を用いることでデータを再現する物理モデルパラメータを推定可能とした.そして,従来困難であった統計精度のスペクトルデータからも物理パラメータの推定が可能であることを明らかとした.本手法は本研究課題の目指す,より柔軟な境界条件を考慮した疎なモデル構築に利用できると考えられ,重要な成果であると考えられる.本研究に対して,2019年度量子ビームサイエンスフェスタへ招待講演いただき,研究で得られた結果は論文として査読付き英文誌Journal of the Physical Society of Japanに投稿中である. また,ベイズ推論のためには高計算コストのベイズ自由エネルギーの計算が必要であり,計算コストを低減するため,ベイズ最適化およびガウス過程の手法を用いて,少数の分布サンプリングから近似的にベイズ事後確率分布およびその最大値を推定する手法を提案した. 研究で得られた結果は論文として査読付き英文誌Journal of the Physical Society of Japanに投稿し,査読の上採択された.本研究の成果により,ベイズ自由エネルギーが解析計算困難なモデルに対しても低い計算コストで導出できることが示され,今後のスパースモデリング手法の開発に対して重要な成果であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,柔軟な境界条件を組み入れたスパースモデリング手法の開発を目指すものであった.そこで,獲得された境界条件を持たないスペクトルデータの基底表現解析に対するスパースモデリング手法について現在研究を行っている.前年度においては,スペクトルデータの解析を進め,分布関数基底をスパース計測に対する境界条件に応用,計算機シミュレーションモデルに対するスパースかつ柔軟な基底の利用,の研究に発展させた. 今後の研究においては,前年度から取り組んだ数値シミュレーションデータに対して有効に機能するスペクトルデータの基底表現解析モデルを実データに対して有効に機能するモデルに拡張する.実データはシミュレーションデータと比較して,統計精度が低く,シミュレーションでは想定し得なかったノイズが含まれるため,推定に対してより頑健なモデルとすることが求められる.得られるデータは実験条件や観測対象に応じて,トレンドを持つことがしばしばあるため,実験条件および観測対象からの影響を事前分布および推定モデルに組み込むことで頑健なモデル構築を行っていく.また,これまでの研究で得られた成果で対外発表を行い,博士論文に成果をまとめる.
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