2019 Fiscal Year Annual Research Report
ハムスターをモデルとした哺乳類の「雌」におけるPIWI-piRNAの機能解明
Project/Area Number |
18J22025
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石野 響子 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | RNAサイレンシング / PIWI-piRNA / 哺乳動物 / 生殖細胞 / ハムスター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はゴールデンハムスターを解析モデルとして,哺乳類の「雌の生殖細胞」におけるPIWI-piRNAの分子機能解明を目的としている.本年度は以下に挙げる3つの成果を挙げた. 1. ハムスターにおけるゲノムデータの構築:ハムスターのリファレンスゲノムは公開されているものがあるが,ATGC以外を意味する”N”が全体の約20%を占めており,特にトランスポゾンをはじめとするリピート領域がアセンブルできておらず,piRNAの解析に不向きであることが問題であった.そこでPacBio Sequel用いたゲノムアセンブリを試みた結果,シーケンスは約100Xカバレッジの深度を得ることに成功し,アセンブルによって約3,000本のscaffoldを得ることができた. 2. ハムスターにおけるPIWI-piRNAの単離および解読:我々はこれまでに高品質な抗PIWIL1, PIWIL2, PIWIL3モノクローナル抗体の作製に成功し,PIWIL3はMII oocyteのみで19-21塩基長の非常に短いRNAが結合していることや,PIWIL1はMII oocyteから2-cell embryoにかけて結合するpiRNA群の塩基長が短くなることを明らかにした.今年度はこれらをより詳細に解析するため,超並列シーケンサーを用いてPIWIL1およびPIWIL3にそれぞれ結合するpiRNA群の配列を解読した. 3. MII oocyteにおけるPIWIL3の分子量変化の解析:我々はこれまでに,PIWIL3タンパク質がMII oocyteでのみ分子量が増加することを明らかにしたが,これが何によって引き起こされているのかは不明であった.そこでこの原因を明らかにすべく,抗体や酵素を用いた生化学実験をおこなった.結果,リン酸化修飾を受けていることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実施を予定していた実験をすべておこない,一定の成果を挙げることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた成果を踏まえ,今後は以下の実験および解析をおこなう. 1. 染色体レベルのゲノムデータの完成:PacBio Sequelによって得られたゲノムデータにHi-Cデータを組み合わせ,最終的には21本の常染色体と2本の性染色体レベルのゲノムデータを構築することを目指す.またハムスターにおけるトランスポゾンを同定するため,共同研究により新規構築したハムスターゲノムデータをもとにトランスポゾンのコンセンサス配列の同定を進める. 2. 染色体レベルのゲノムデータを用いた配列解析:前述したデータが揃い次第,これまでに得られているトランスクリプトームデータおよびpiRNA群の配列データを用いて解析をおこなう予定である. 3. PIWIL3のリン酸化解析:PIWIL3においてどのアミノ酸がリン酸化修飾を受けているのかを同定する.またPIWIL3はこの時期特異的にpiRNAが結合するため,PIWIL3においてリン酸化修飾がpiRNAの結合能と関係しているかどうかも併せて検証する. 以上の成果をすべてまとめ,令和2年度に国際学術論文誌に投稿する予定である.
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