2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子認識型触媒による位置選択的シアノシリル化及びC-Hアミノ化
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18J22026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二宮 良 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 位置選択的反応 / 不斉反応 / 触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新規触媒的位置選択的反応の開発を目的とし、(1)ジアールの触媒的位置選択的シアノシリル化、(2)触媒的位置選択的C-Hアミノ化の2つのテーマに取り組んだ。(1)ジアールの触媒的位置選択的シアノシリル化については、複数の基質に対し分子認識型触媒、認識部位を組み込んだ反応検討を行ったが、基質準拠での位置選択性が発現するのみに留まり触媒制御での位置選択性の発現は確認されていない。基質の反応性の差を利用したカルボニル基に対する位置選択的C-C結合形成反応については多くの報告がなされているが、反応性の似たカルボニル基に対して分子認識型触媒を用いて位置選択性を制御することはより達成困難な課題と考えられ、今後検討を続ける中で触媒準拠での位置選択性制御法の確立を目指していきたい。一方、(2)触媒的位置選択的C-Hアミノ化に関しては、未だ報告例のないロジウム触媒を用いたシリル基β位の不斉C(sp3)-Hアミノ化を中心に取り組み、立体選択性は中程度に留まるものの、目的とする位置選択的及び立体選択的C(sp3)-Hアミノ化の開発に成功した。また、本反応の速度論解析を速度論的同位体効果を中心に行い、新たな知見を得ている。本反応は不均一系反応であるため速度論解析は容易ではなかったが、試行錯誤を繰り返し実験手法を確立することで精度良く速度論データを得ることに成功した。以上の内容について学会発表も積極的に行っており、国内学会での口頭発表3件を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ジアールの触媒的位置選択的シアノシリル化について、初めにNHNs基を分子認識部位として組み込んだジアールを基質とし、合成した分子認識型触媒を用いて反応検討を行ったが、汎用触媒と分子認識型触媒との間で位置選択性の差が見られなかった。そこで、NHNs基に加えてエステルカルボニル基を分子認識部位としたジアールを用いて反応検討を行い、溶媒、温度などの種々の条件を検討したが、触媒間での選択性の有意差は見られなかった。(2)触媒的位置選択的C-Hアミノ化については、所属研究室で見出したロジウムナイトレノイドによるシリル基β位選択的C(sp3)-Hアミノ化の不斉化に取り組んだ。種々の基質に対し検討を行う中で、本アミノ化条件に対してシラシクロアルカン類が高い反応性を持つことが明らかとなった。また、不斉触媒を用いた検討についても、鎖状シラアルカンではなく環状シラアルカンを用いることで立体選択性が向上し、中程度の立体選択性ではあるが、高収率、高位置選択的にC(sp3)-Hアミノ化が進行することを見出した。また、ロジウム触媒によるC(sp3)-Hアミノ化の反応機構の詳細を明らかにするべく、速度論的同位体効果を中心に速度論実験を行った。D化体の収率を1HNMRで追跡するのが困難であったため、単離収率を求めることで解析を試みたが、精度の良いデータが得られなかった。反応が不均一系であるためポット毎で速度が変化し得るのが問題であると仮説を立て、1つの反応溶液から対し時間毎に少量の反応液を分取、解析することで反応追跡を試みた。分取した反応液に対し、19FNMRによる解析を行うこととし、トリフルオロメチル基を導入した基質を用いたところ反応の追跡が可能であり、直線性の高い収率-時間プロットを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ジアールの触媒的位置選択的シアノシリル化については、基質の認識部位の構造、位置を中心に検討して行く。スルホンアミドやアルコール、ウレアなどを導入した基質を合成すると共に、反応点とならないアルデヒドが遷移状態の安定化に寄与するよう、各官能基の位置を吟味し基質を合成、検討して行きたい。(2)触媒的位置選択的C-Hアミノ化について、シリル基β位選択的不斉C(sp3)-Hアミノ化に関しては更なる立体選択性の向上を目指して行きたい。現在最適である触媒について、官能基を導入した類縁体について検討するとともに、基質である環状シラアルカンの構造についても最適化を進めて行きたい。また、申請者らは所属研究室で独自に開発した分子認識型求核触媒が、σ対称ビスアルカンフェノールの臭素化による遠隔位不斉非対称化反応に有効であることを見出している。本臭素化は研究目的とする分子認識型ロジウム触媒によるジアリールメチルアミンの不斉非対称化反応と類似する芳香族求電子置換型の反応であると考えられ、詳細について解明することで遠隔位不斉非対称化反応に関する普遍的な知見が得られると考えている。鎖長、プロキラル炭素の環境を変えた基質を用いる検討を通して、不斉発現に重要な因子を突き止め触媒による位置選択性制御法の確立への一助としたい。
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