2018 Fiscal Year Annual Research Report
アルキルシリルペルオキシドをアルキル化剤として利用する新規分子変換法の創出
Project/Area Number |
18J22096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
櫻井 舜也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 銅触媒 / ラジカル反応 / アルキルシリルペルオキシド |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の有機合成化学においてラジカル反応は幅広く用いられる分子変換法の一つである。その中の一つにジアルキルペルオキシドと金属触媒によりアルキルラジカルを発生させる手法がある。しかし、この手法には100度以上の高温が必要であり、また取り扱いなどの観点から、利用できるジアルキルペルオキシドや発生可能なアルキルラジカルの種類には限りがあった。このような背景の下、申請者は様々なアルキルラジカルの発生を可能にする新たなペルオキシドの開発とその利用法の確立を指向した研究を行っており、過酸構造の一方に炭素、もう一方にケイ素が結合したアルキルシリルペルオキシドが銅触媒存在下、50~60度という温和な反応条件下でアルキルラジカル発生源となることを見出し、それを利用したアミドやアリールアミンのモノ-N-アルキル化反応の開発に成功していた。 今回申請者はこのアルキルシリルペルオキシドと銅触媒を組み合わせた反応系において、触媒量のDMAP を追配位子として用いたり、溶媒としてアセトニトリルを用いることで室温下においてもアルキルラジカルが発生することを見出した。また、リモネンのような天然物からもコバルト触媒を用いた空気酸化によりアルキルシリルペルオキシドが合成できることも見出した。本手法はカルボン酸のエステル化反応にも適用可能であった。 さらに申請者はアルキルシリルペルオキシドを用いた有機ホウ素化合物や有機ケイ素化合物の合成法の開発にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたアルキルシリルペルオキシドと有機ケイ素化合物を用いたカップリング反応の開発には至らなかったものの、かねてより研究課題としていたアルキルシリルペルオキシドのライブラリー構築もコバルト触媒を使った空気酸化法を取り入れることで順調に進展している。 さらに銅触媒存在下、アルキルシリルペルオキシドとジボロンを反応させることで、有機ホウ素化合物が得られることは既に見出していたが、ジボロンをシリルボランに変えることで有機ケイ素化合物が得られることも併せて見出した。 以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアルキルシリルペルオキシドと有機ホウ素化合物を組み合わせた更なる反応開発に取り組むと共に、アルキルシリルペルオキシドをアルキル化剤とするアルキル化反応がどのような反応に適用可能であるか検討を行っていく予定である。
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